宮女図(伝桓野王図)の本物閲覧覚え書き
左画像は、昭和5年に聚楽社によって発行された「宋元名画集」に収録された木版(縦×横 約40センチ×14センチ程度)を撮影した画像です。もちろん本物は現在、大原美術館分館の特別展に展示公開されています。まず、私が気になっていたのは、1、線描の細さ、繊細さがどの程度? 頭部に見られる髪の毛の描写、目、 衣服の線描、 頭にかぶる鳥紗帽の表現、 飾り、ベルト、笛等の細部2、衣服の色、朱の色の実際について3、ベルト付近に見えるのは金箔?
先ず、1、の疑問に対して頭部に見られる髪の毛の描写、目、鳥紗帽の表現については、とにかく驚かされました。ルーペが必要なのでは?と思う程の細さ、それでいて柔らかいゆったりとした線により描かれていました。緊張感を持ちながらもなおかつ柔らかい線です。鳥紗帽にじっくり注目して眺めれば、次第に焦点を結び見えてくるレースのような細やかな文様表現、透ける素材表現、飾りの中に見る事が出来る群青。※(上記説明については、上画像をクリックすると少し大きく表示する事が出来、いくらか見所として確認できると思います。)
3、のベルトや笛の表現については、美術館では少し浮いた白緑青による着彩を感じましたが、帰宅して木版を見ると、線のシャープさ、醸し出される雰囲気も違い、かなり本物との違いを感じる事となりました。左画像で感じられる金箔によるものと思われる輝きが、もしかしたら会場で見た実物の柔らかな見え方につながっているのかもわかりません。前後しますが、衣服の線描の細さにも注目しました。このあたり木版の顔に見られるそれに対して、衣服ではすこし力の入れ具合が甘く感じられた部分です。実物の凄さをあらためて知った箇所でもありました。実物は描かれたとき(13世紀から14世紀、元の時代)からの時間をまとい、軸特有の巻皺もあって、均一に光を全面にあてて見る事は難しい状況ですが、それでも見る人間の脳はそれを補完し匂い立つような魅力的な姿として記憶させてくれました。衣服の朱か辰砂か、柔らかくよい色でした。頭部、顔、髪の毛、頭にかぶる鳥紗帽などの描写を、もし自分が描くとしたらと思ってご覧になることでまた違った発見が出来る様に思います。
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