井倉峡・羅生門
高梁川を縫う様に走る国道180号線、傍らに見える川幅が次第に狭くなるとともに、山の斜面に添って走る事になります。川面に映る風景が刻々と変わり、自然豊かな場所へ今まさに向っているのだという高揚感がわき上がって来ます。 古びた鉄橋、子供の頃に見たSLが勇壮に走り抜ける写真を思い出しました。当時と変わらぬ風景があるのです。遠足で訪れた井倉洞の記憶、鍾乳洞内部のちょっと怖かった暗闇。 恐怖、水爆実験のニュース、もしくは当時のマンガの影響だったのか、何らかのアクシデントによって、この洞窟の中に取り残され、外の世界と隔絶された状況を思った事が蘇りました。 出口で見た光、美しく澄んだ川の流れ。 さながら童心に戻った探検、鍾乳洞巡り。井倉洞、満奇堂とハシゴすることになりました。最後にと訪れた「羅生門」は、誰一人いない場所でした。聞けば鍾乳洞のなれの果ての姿だとか。危険防止のため、下をくぐる事他、近づく事も制限された場所です。気の遠くなる様な時間によって生み出された鍾乳洞が再び風化によって土に戻って行く経過、その瞬間の姿。出会った刹那。今回のメインの絵は、この羅生門の姿にすることにし、この季節見る事が出来る霧を加える事にしました。通り抜ける事の出来ない門、あの先にはロストワールドと思いを馳せたのです。
カットには青空、紅葉進む特徴的な景観を加えました。近景は桜の並木です。葉が太陽の光を淡くピンクに反射したように見えたのです。
切り立った崖と澄んだ流れ。青空を映す川面。
ここで紹介している画像は、作家・紀田順一郎さんとの共著『吉備悠久』(山陽新聞社刊、2006)に収録されたものです。紀田順一郎さんの「 井倉峡・羅生門」紹介は、以下リンクよりどうぞ。http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2011/102601/index.html
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