墨についての覚書
徳島県立近代美術館で行われている「墨と紙が生み出す美の世界展」 付帯展覧会として「墨の美しさを実感した子どもたちによる墨の絵」展がちょうど開催中(11日まで)でした。7月から近代美術館と学校が連携して「墨に親しむ」「墨で作品を描く」という2つのワークショップの成果だそうです。 縁あって小学校図工の教科書を先日見たばかり、その中には「墨のうた」、「墨から感じる形や色」というページがありました。7月に岡山県立美術館で行った「この国の価値観の発見ワークショップ 〜毛筆という道具〜」http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2012/070301/index.html参加者の中に小学校の先生がいらっしゃったことからの縁でした。ワークショップでは、墨、硯のことにも一応触れたのですが、メインは「墨」を使って書くことの原初的な姿と、筆という道具の機能を手がかりにしてその可能性、価値観について体験をしていただくことでした。この体験を他の先生方々(造形教育センター岡山の会員)にも、ということで、その実技研修会講師をさせていただく上で参考として見せていただいたのです。 墨という素材への見直し、注目、こうした動きがあることを改めて感じるとともに、一方で「伝統教育」という言葉をふと思い出していました。教科書の作例を見る限り、伝統との関連付けと言うよりも、あくまで現代表現としての墨の使用こそがメインに感じられたのです。 ちょっとさびしい姿です。 はたして、この国の文化、価値観を探している身、いくらかでものその専門家としては、こうした話をいただいたおりには、なにかしらわかりやすい提案、体験の機会を作りたいと思いを巡らせている最中なのです。 9月には倉敷市立美術館で、ふれあい造形教室「屏風祭りに参加しよう!-墨で扇面画を描こう-」を行いました。http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2012/091201/index.html
まさしく、おとなから子供まで、「筆の機能」を知ってもらい、使い方の基本、「運筆」の勘所を体験してもらいたいと行いました。 なかなかおもしろい作品群となったと思うのですが、、、、。扇面という形、屏風という表現形式も参加者の方々に刺激になっていれば幸いです。
紙質の違い、ドーサのあるなし、そして扇面という形。 油煙墨に松煙墨。 水の使い方。
その筋の関係者!も、素材に実際に触れ、実際に描き体験することで見えてくること、感じられることもあるはずです。
こちらは徳島県立近代美術館で行われている「墨と紙が生み出す美の世界展」の付帯展「墨の美しさを実感した子どもたちによる墨の絵」の一部です。関係者の指導他、地道な取り組みが感じられる素敵な作品群でした。同時に簡易軸装、額装なども見られ、展示形式へのアプローチも興味深かったです。
墨運堂取締役会長の松井重憲さん講演の要点1:昭和60年頃、墨用の膠がなくなったことで、以後昭和62年、63年頃より日本の墨も悪くなった。中国でも文化大革命以後、やはり悪くなった。膠の枯渇が墨を再考するきっかけとなった。2:墨が悪くなったのは「膠」が原因。墨の原料は、カーボンと膠だから。3:膠はタンパク質(保水性を持つコラーゲンとゼラチンのブレンド) ※ゼラチンだけではおりない墨が出来た 膠の製法の究明、コラーゲンを含んだ膠の抽出方法について 新墨と古墨について 膠の加水分解 墨制作の勘所 乾燥とゲル化 墨の良し悪しは膠の良し悪し。4:墨の寿命と使い方。硬水軟水、唐墨と和墨の使いこなしのヒント。 墨の寿命は膠の加水分解。墨の中でのカーボンと膠の比率変化。原理原則!、批判できる基本を知ることが大切。5:原料のカーボンの製法、今日的な考え方。 水への分散率 液墨 と ゲル化しないための手法 材料による危険6:摩墨、オリジナル硯へのアイデア。 +膠作成へのヒント。 ※ 墨のQ&A 墨運堂第5版平成23年10月20日発行、50%の墨
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講師は墨運堂取締役会長の松井重憲さんです。
セミナーで拝聴できたこと、またここのところ関わっている事についてなど覚書。