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11/28//2012  材料技法

岡山の膠(膠製作実験その1)

■ 日本画材料として、あえて言うのもはばかられるほど当たり前の存在だった三千本膠。しかし数年前、市場からその姿を一度消すこととなりました。その後いろいろな方のご努力、ご尽力によって、再び市場で購入することが現在できるようになっています。はたして今後もずっと安定に供給され続けるのでしょうか?。
この国の価値観を探す絵描きとして、実際に試して描くというスタイルでこれまでやって来ましたが、その試みを支える様々な素材に内包される価値観、ノウハウの数々も重要です。
「同じ事をしようとすれば違いだけが見えてくる」、「ニカワ」についても一度は試して見なければという思いをとうとう試すことになりました。
 
様々なニカワの姿
>> 様々なニカワの姿 (78.36KB)

左画像は、私がこれまで手に入れて来たニカワの一部です。この他、液状のものなども含め様々試して来ましたが、現在はこのうちの幾つかを用途に応じてブレンドしたり、また場合によってはそのまま使用するなりして使い分けています。

ちなみに中央、細長い姿で3本あるのが三千本膠です。それなりに昔に手に入れたものですが、学生時代に使っていた初期のものとはやはりどこか違って感じられます。私が初めて出会った頃は、この細い姿の両脇あたりにトゲトゲ?がもっと出ていたように思います。

学生時代、当たり前に買い求め使っている三千本膠の使用感が次第に変わってきたのを漠然と感じた時がありました。当時、友人も同じ感想だったようで、かすかな知識でしたが、三千本膠の原料となっているのは牛の皮、時代が変わり、その牛を育てる飼料が変わった事、飼育が変わった事も原因ではないか?と、そんな話をし、また納得したような時代でした。
 

 
実験に用いた猪の皮
>> 実験に用いた猪の皮 (105.61KB)

それから数十年過ぎました。途中、BSE問題で、原料の輸入が滞り、原料が豚の皮に切り替えられたなどという話も伝え聞いたことがあります。また製造現場も後継者問題他があって、継続していくことが大変であると聞いたことがありました。しかしそれでも販売自体は続けられてきたのです。
ところが数年前、半ば突然のように市場から三千本膠が消えたのです。よくいわれることではあるのですが、無くなったことによって気づく事、その存在の重要性に気付かされることというのもあるのです。
先日の徳島「墨と紙が生み出す美の世界展」での墨に関するセミナー、講師の松井重憲さんがお話くださったことともつながります。「墨用の膠製造が行われなくなった事が墨を再考するきっかけとなった」、まさしくの話なのです。

※参考「墨についての覚書」
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2012/111201/index.html


「日本画」と呼ぶ存在は、その獲得した表現の多様性に伴って、使用する材料の選択を拡張し、絵の具、和紙や膠、筆、刷毛といったそれぞれの材料に、かつて存在していなかった、使われなかった存在についても使用を広げ認めてきました。それ自体は芸術における創造性といった観点から素晴らしいことに違いありません。一方、あえて「日本画」と呼ぶ存在について考えた時、何かしら拡張のその過程で見落としてきたこと、存在があったことも確かだと思うのです。和紙・絹も然り、墨も然り、絵の具も然り。そして筆や刷毛といった道具。箔の厚みの事など。巻物、掛け軸、屏風、襖、、、、。

折りにふれ、膠に関する資料なども集めて来ました。昨年、東京の知人より大学で猪の皮から膠作りを実験した学生がいたという話を偶然聞くことが出来ました。またその結果もなかなか良いにかわが出来たとのことでした。

私が食いついたのはその原材料が「猪」であったということ!なのです。

東京を離れここ岡山の吉備高原という山里で暮らし始めたのは、「昔の方々が行った絵画制作上での同じ事?」をするために、自然をより間近で感じたかったからにほかなりませんが、一方、自然故の様々な問題にも出会うことになります。ここでは猪の害、獣害と呼ばれる事象が発生しているのです。地元の方からそんな話を聞いていたこともあり、ならば、その猪を使って一度実験をと思っていたところ、、、、

地元の方(いろいろ助けていただいています)、研修会参加の学芸員方々、今年から関わった大学の生徒たち、新聞社の方も興味をしめされ、、、、

「岡山の膠(仮称)」膠制作ワークショップを開催することを企画しました。
(時:平成25年2月3日(日)、4日(月)場所:岡山県吉備高原都市 ※興味のある方、参加ご希望の方は、森山までご連絡ください。)

 
プレ?膠製作実験
>> プレ?膠製作実験 (13.31KB)

いろいろ助けていただいている川上さん(地元の方!感謝です^^)より、「来てもらって見てもらい、参加してもらうのは楽しいけれど、、、、失敗したらカッコ悪いでッ!」、とのまっとうな?アドバイスを頂き、プレ実験を始めています。

以下、疑問点>> アドバイスいただける方よろしくお願い致します!!。メール他、待ってます^^。


1)皮についた毛はなるべく綺麗に前処理したほうがよい(剃る、抜く、焼く・・・・)>> 
 皮についた脂肪、肉などはなるべく綺麗に取る>>これは感覚的にわかります。
 
 疑問は「毛」について:何故、毛を綺麗に処理する必要があるのか?

 a)煮ることによって毛からも膠制作にあまりありがたくない成分が出てくるから?
 b)理由が毛についた汚れなどを取るためだったら?
       高圧洗浄機などで洗うというのはだめなの ?
       煮だしたあと、濾すことで対処は出来ないの?

  はさみで毛を切り取り、ナイフでこそぎ落とした程度の処理
  実験では濁りが出ました。
  この濁りは、毛の処理の仕方からだったのでしょうか?

毛を処理する必要性、意味、また効率の良い処理の方法などアドバイス待ってます。

2)いかにカビや腐敗を防ぎ乾燥させるか、、、ここがミソですね。

煮出す温度他、墨運堂の会長さんのアドバイスなども参考になりました!。

 
実験、ワークショップ開催予定場所近くからこの月曜日(26日)朝の眺め。風景もさることながら、ワークショップ当日は、鶏の原生種他、いろんな品種の鶏も実際に見ること、スケッチも可能になる予定です。この他、岡山ならではのカーボンを使い、この実験で出来た膠を組み合わせて墨を作ってみたり、土から絵の具を生成する実験なども行えたらと思っています。和紙も、、、、、、、、
>> 実験、ワークショップ開催予定場所近くからこの月曜日(26日)朝の眺め。風景もさることながら、ワークショップ当日は、鶏の原生種他、いろんな品種の鶏も実際に見ること、スケッチも可能になる予定です。この他、岡山ならではのカーボンを使い、この実験で出来た膠を組み合わせて墨を作ってみたり、土から絵の具を生成する実験なども行えたらと思っています。和紙も、、、、、、、、 (79.58KB)