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1/12//2013  ○Web吉備悠久

吉備津神社 岡山市

■ 2001年(平成13年)1月14日(日曜日)山陽新聞掲載の吉備悠久は、岡山市にある吉備津神社を訪ねる企画でした。
 
来光 吉備津
>> 来光 吉備津 (106.81KB)

 岡山市から鳥取県松江市に至る国道180号線。岡山と総社間で見られる田園風景、なだらかな低層の山、総社から高梁間では高梁川を左手に見て進みます。高梁から新見にかけては傾斜を厳しくした山肌が道路に迫り、川面の色にその先にある大山、中国山脈のいただきを感じることになるのですが、その沿道に広がった古い集落のあり方を見るにつけ、この道がかつて日本海側と瀬戸内、鉄、文化を結んだ重要な交易路であったことを伺わせます。もちろん現在でも岡山県北と県南を結ぶ重要な役割は変わりません。
 
 それぞれ要所、いくつもの並行した道路が岡山、総社間にも作られてはいるのですが、朝夕にはご多分にもれず渋滞箇所が生まれます。岡山市街地に入る直前、道が大きくカーブをするあたり、正面の鯉山中腹に特徴のある社の屋根が、そして参道が道路に直行する姿で現れます。

 大学時代、奈良の古美術研修の折など、ふと思い出したのです郷里にもあった立派な社、長く続く回廊。はたして何処にあったのか記憶も定かではないままいたのですが、小学生の頃、遠足で訪れた場所、吉備津神社の回廊であったことを取材の折に思い出しました。

 制作にあたっては、テーマが神社、正月明けの掲載という事も考慮して俯瞰、曼荼羅図を模した様式を試みたこと、見たままではなく理解を描くそんなことを意識して描いたことが思い出されます。

 
特徴的な社の屋根、葉を残した銀杏の枝
>> 特徴的な社の屋根、葉を残した銀杏の枝 (63.69KB)

取材中、「津」という言葉の由来、地名との関係を紀田先生からお聞きしたことが思い出されます。

「津」の付く地名が古代港の名残だとか。
このあたりがかつて海に続く入江であり、水に映った鯉山の姿を思うとき、人間の営みの長さ、歴史を感じずにはいられません。
 
 この話の印象がこのあと制作する大作へのインスピレーションとなり、実際に見える風景、平地を海に見立てて描くことにつながったことを思い出します。

 
回廊の様子
>> 回廊の様子 (68.5KB)

長く続く回廊、傍らには季節の植物が植えられています。

はたして何処まで続いているのか、この長い回廊を歩いたイメージが子供心に強烈でした。記憶はいい加減なもの、何処だったか、何処で見たのか思い出せないままこの回廊のイメージだけが東京で暮らしている時も夢のなかに現れて来たのを思い出します。

総社方面に向かえば、足守も近く、右手山の頂に復元された古代山城の姿を見ることもできます。また南には国分寺、五重塔、古墳群。

続く田園風景、豊かな地、古代吉備を伝える姿。今更ながら、いかに岡山という地が地勢的に恵まれた場所であったかということを思うのです。
 

 

ここで紹介している画像は、作家・紀田順一郎さんとの共著『吉備悠久』(山陽新聞社刊、2006)に収録されたものです。
紀田順一郎さんの「 吉備津神社 (岡山市)」は、以下リンクよりどうぞ。

http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2013/011001/index.html