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2/13//2013  材料技法

日本画の再定義

■ 先日の「膠作りワークショップ」もこの試みの一つと言えると思うのですが、膠を使った絵画は「膠彩画」とも呼ばれ、広くアジアで確認出来る存在です。またヨーロッパにおいても「グルー・テンペラ」と呼ばれる存在があることが知られています。グルー、接着剤としてどんな素材を使うかは、それぞれの国のおかれた気候風土・地域性も含めた民族の歴史が関係しているのは当然のことでしょう。
 
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左画像は先日広島県立美術館(2月2日)で行った船田玉樹展に付帯して行われたワークショップの様子です。
 
船田玉樹さんの絵画、チャレンジの仕方を参考にし、これまで私が探してきた運筆の秘密や、この国の絵画に見られる時間表現の可能性を手がかりに、水墨画に取り組んだワークショップでした。

実際に描いて試すことで何らかの実感を持った存在として私がこれまで発見してきたこの国の価値観と呼びたい「何か」を、参加者の方々と共有出来たとしたら嬉しいことだと思っています。

 
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左画像は、井原の華鴒大塚美術館で行われた特別鑑賞会(2月10日午前)の様子です。

昨年から私の関係する日本画を学ぶ方々と華鴒大塚美術館収蔵の入江波光作「葡萄に栗鼠」の技法研究を行って来ました。

裏箔の使用の有無、もし使っているとしたらその狙いは何か。

制作にあまり箔を使われる方という印象のない入江波光さんが何故使ったのかを実際に描いて推測してみようという試みでした。

取り組んでほぼ半年、進行の早い方も遅い方もいらっしゃいますが、華鴒大塚美術館の特別の計らいで実際に比べて見られるチャンスを今回いただいたのです。

 
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作業の進め方、描き方の基本。

日本画の基本的な作業のありかたを知ることが美術館での鑑賞の助け、自分自身の絵画上達の一つの方法になることが実感出来た取り組みなったことと思われます。描き方を知ることは、具体的な見方を得ることにもなるのです。

またこの過程で知り得たことは、昔の画家達、先達の苦労や、努力、素晴らしい才能の開花を実感することにもつながります。美術館の収蔵品が素晴らしい具体的な先生、お手本ともなるのです。

絵は単に「好き嫌いで見てよい」といった接し方では得られない世界の広がり、瞬間のきらめきだけではない継続的な学びの実現にも繋がってくるように思います。確かに若さは素晴らしいものです。それに加えて経験、長生きすることによってより得られる世界の広さを知ること、その魅力も認められたらと思うのです。美術館、博物館と言った場所がより身近に感じられる学びの場所になるような試みです。けっして新しいことではなく、そもそもがそういった場所であったはずなのです。
 
2月10日午後は、入江波光展を開催中の笠岡市立竹喬美術館に会場を移してこの「葡萄に栗鼠」の模写を題材とした講演をさせて頂きました。2種類の模写の話、日本画の基本的な材料と技術の話、基本を学ぶことによって得られる「何か」、模写から得られる「何か」について、加えて展示作品それぞれについての注目点の紹介。最後は、館長とのプチ対談?もありました。
大変大勢の方々にお集まり頂きました。感謝すると共に、楽しんでいただけたとしたら嬉しいことと思うばかりです。
 

 
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この2月16日には、岡山県立美術館でのワークショップがあります。
この国の価値観を探すワークショップ第二弾。


恵まれた自然、日本という国の姿。世界全体で考えた時のこの国のアートとして、現在なりの文脈を与え、「日本画」という言葉にあらたな意味、魅力を再定義できたらと思うのです。

発見と出会い、ここのところ思いついたこともあります。そんなことも試せたらと思っています。