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11/19//2013  材料技法

下絵を読み解く 京都市立美術館

■ 京都市美術館開館80周年記念展「下絵を読み解く」ー竹内栖鳳の下絵と素描 、京都市美術館には、竹内栖鳳展がもちろんメインで行ったのですが、竹内栖鳳展出口でふと右手を見ると、下絵と素描の展示が目に入りました。さて、入ろうかどうしようかと思いつつ歩いていると、「栖鳳展を見た人は、一人200円です」の誘いに乗って入ってみると驚くほどのボリューム!!、私にとっては、ある意味で本展よりも楽しめた企画だったのです。
 
下絵を読み解く 竹内栖鳳の下絵と素描 展覧会チラシ表
>> 下絵を読み解く 竹内栖鳳の下絵と素描 展覧会チラシ表 (33KB)

大小様々な下絵が予想以上にたくさん並んでいました。

全体の構成、バランスを確認しながら
描こうとしている対象の形を整えるように、
線が何度も引き直され、これはという線に集約されていく過程の姿

西洋絵画にも下絵に類するものがあると思いますが、
しかし、何かが違うのです。

あくまでこれは完成とは違う姿
いわばこれから筆が通る道路を作るような作業のように思うのです

 
竹内栖鳳展 チラシ表
>> 竹内栖鳳展 チラシ表 (30.84KB)

デッサンという言葉
いかに意味を与えるかについては、それぞれの思いもあるでしょう


少なくともこの当時の日本画家の下絵について、
私が考えるのは、あくまで「筆」という道具をいかにこれから自由に使えるように準備するか、これから行う「運筆」に焦点をあてた作業になっているのではないか・・そんな風に思うのです。
 
特に竹内栖鳳の本画を見た後だけにこんな感想を持ってしまいました。

<昔の日本画家は筆でデッサンをした>こんな話もよく聞きました。確かに筆しか無かった頃はそうだったでしょう。しかし、今回展示されていた下絵を眺めていて、不思議と「筆」でなければならない特別な何かは認められなかった様に思いました。下絵を描くための道具は、ペンでもよいでしょうし、木炭でも良い。もちろん筆と墨でも良いけれど、下絵として描かれているものは、あくまで本画で自由自在に「筆」を使って描くおりの準備のため。あえて言うなら、下絵は後の「筆」、もちろん「刷毛」も、また面蓋などの「行程」も、どこで「筆」をどのように使うかまで念頭において描かれているのです。

中には、本画で描かれた線との類似性を感じさせるものもありましたが、「筆」による「生きた線を引く」ための冗長性を残したものが多かったように思いました。
 

 
木島桜谷 泉屋博古館 展覧会カタログ表
>> 木島桜谷 泉屋博古館 展覧会カタログ表 (43.32KB)

ペンや万年筆、鉛筆。
使う筆記具の成り立ち。

堅い素材となることによって大きな訓練をしなくとも使える道具になりました。柔らかい毛をもつ筆を自由自在に動かすためには、修練が必要なのです。

いわゆる対象となるコンテンツ(内容)が、何が描いてあるかのモチーフの話であり、そのことを伝えるのが目的であるなら、はたしてこの修練はなんのために存在するのか、またしたのか。

内容を越えて(実はこの国での価値観、本当の内容はこちらにあったのではないかなどと思ったりもしています)、<筆を使いこなす>というところに何か大きな価値観があったように思うのです。

・・・と、まぁこんな事をかねてより考えてはいたのですが、今回の「下絵を読み解く」は、そんな私に確信となるヒントをくれたように思ったのです。

 
琳派の伝統とモダン 神坂雪佳と江戸琳派 細見美術館チラシ表
>> 琳派の伝統とモダン 神坂雪佳と江戸琳派 細見美術館チラシ表 (33.45KB)

宗達、光琳を評して「色彩の運筆」と、松岡映丘は言ったそうです。
西洋的な価値観を取り入れつつも、日本のオリジナリティー確立には大和絵のはたす役割を認める(※アトリエ美術大講座 日本画科 1基礎学)など、共通する何かを感じます。

絵の表面に現れた絵具の乗りを考える時、その筆法を意識せざる負えないのが京都の絵・・・

また小野竹喬さんの残された技術ノート記載の実践のような姿もこの下絵展で見ることが出来ました(プロセス・絵具の使い方)。これも収穫。

 
皇室の名品展 京都国立近代美術館 リーフレット表
>> 皇室の名品展 京都国立近代美術館 リーフレット表 (31.71KB)

皇室の名宝展では、あらためて色の美しさを活かすことを再確認しました。また多様な画家たちのらしさ・旨さも見ることが出来ました。


秋たけなわの京都、紅葉狩り、大勢の人で賑わう街を全て歩きで回った一日でした。
1:木島桜谷 泉屋博古館 >2:竹内栖鳳展 3:下絵を読み解く 京都市立美術館 >4:皇室の名品 京都国立近代美術館 >5:琳派の伝統とモダン 細見美術館 + ギャラリーも2つ周りました

※竹内栖鳳 確かに昨年、東京の山種美術館で見ました。またこの展覧会もすでに東京で開催されました。しかし、ここ京都では、この京都市美術館で「下絵を読み解く」展が同じ時期に行われる・・・狙っているのは当然でしょうが、京都の底力を感じる開催でした。お薦めの展覧会です!!。