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7/1//2014  材料技法

箔の焼き合わせ・切箔

■ 絵画制作上での箔の使用方法について、その厚みや加工方法など、この国の文化との関係などを実際に使用しながら考察してきました。截金と呼ばれる技法(その一部だけでも)を取り上げたいと思いつつもこれまでなかなか出来ず来ましたが、縁あって今回実験を試みてみました。何らかの参考になれば幸いです。
 
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 箔と箔を熱を使って貼り合わせる技法。日本画の入門書などを読むと、<灰の中に火を起こした備長炭を入れ、その炭火の上に灰をかけて準備、その上で二枚重ねにした箔を通して熱を加え縮みを作り、圧力を加え、箔を合わせる>なんて記述が出てきます。炭火を用意したり、またふるいをかけた灰も用意したりと、準備も大掛かりとなり、ちょっと試してみようとはなかなかならないように思います。

 装飾的な切箔、截金という箔を使う技法。絵画表現上使ったから良い絵が描けるかなんて野暮な質問は無しで、純粋に好奇心で楽しんだ方法を紹介します。

 画像左端に写っているのは、アイロンです。あえて説明を加えるとするならサーモスタット機能の無い、業務用のそれであること。温度調整はコンセントの抜き差しで行います。炭火の上を通す程度の高温が必要と言うことです。このアイロンを使うことで、かなりスタート時の敷居が低くなりますね。
 

 
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 箔合紙でサンドイッチ状態にした二枚の箔(1:一枚目、箔合紙に載せた状態で板の上に運ぶ 2:箔の乗った箔合紙の下に箔ばさみを通し、箔の端あたり、広い面積で挟んで裏返して1の上に乗せ、箔と箔を合わせる 結果、板、箔合紙、箔1、箔2、そして一番上には再び箔合紙となる。)※アイロンの熱により、溶けたり、燃えたりしにくく焦げが出来ても良いような木材を下に敷いて行うこと。
 5分程度通電し温度を上げたアイロンを箔合紙上から当て熱を加えつつ密着させる。この時、アイロンを不用意に動かすと起きる真空、起きる風によって箔が動いてしまうので注意を要する。なるべく静かにまっすぐ上下に動かして位置を調整する。

 画像は、銀箔で実験している様子。箔合紙が少し焦げて茶色になる程度で、箔合紙の上面、箔は縮みが生まれ、箔は密着した。加えてもう一枚乗せ、3枚合わせ、4枚合わせと作ってみたが、銀箔の場合はわりと容易に作業を行うことが出来た。
 

 
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 何枚か銀箔の合わせ箔を作成。2枚箔、3枚箔と作ったところで、箔の枚数によりどの程度性質が変わってくるのかと思い、わざと中心をずらして4枚目を合わせた箔を作成してみた。ちなみに画像、一番下5分の1あたりが3枚、中央5分の3が4枚、一番上5分の1が一枚という構成。
 
 断ち切りの銀箔を使用、箔合紙もそのままのモノを使っている。

 
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 手元にあったシリコンクロスを使って簡易箔切り台を作成。その上で箔を切ってみた。箔切りは、竹刀の切れ味が全てと言って良い作業ということを改めて確認。

 竹刀(チクトウ)は、女竹(雌竹・篠竹)から作られる。刃の付け方がポイント。

 
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 ※画像をクリックすると大きく表示できます。

 合わせ箔をしていない部分はちょっとした作業ですぐちぎれてしまい、正方形、短冊、野毛など、加工は容易ではないことを改めて確認(画像・一番下)。

 
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 銀箔と同様に金箔でも実験、こちらは縁付の箔を使用。銀箔で要領がわかったこともあり、スムーズに作業を行う。ただしあとで慣れは禁物と改めて確認することになった。

 
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 金箔も成功。
 金箔の融点は銀箔よりも高い温度(溶かすわけではないが、ここで加える温度は、金属原子?が移動しやすくすることに必要なのだとか・・・)ということで、銀箔よりも熱する時間がより必要だった。
 アイロンで出来る事でもあり、調子に乗って長時間行っていたために箔合紙が劣化するほどとなった。金箔自体は密着、合わせることが出来たが、長時間に渡って温度を上げすぎたためか、部分的に箔合紙に箔が着いてしまい美しく合わせ箔を作ることが出来ない結果となった。
 

 
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 さて、今回初体験のメインイベント プラチナ箔での実験。縁あって、プラチナ箔での切箔を作る実験を行うことになり、今回の記事となりました。

 何故、実験が必要なのか? プラチナ箔を焼き合わせたことが無いというのが一番の理由です。平押で箔を貼るなら問題ないことは明らかなのですが、前段階があるとなると話は別です。調べればプラチナ箔の融点は金よりもより高温!。はたしてアイロン!で合わせ箔が可能なのか?どうか。また作業性はどのようになるのか?


 
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 確かに、銀、金のようには行きません。より時間・温度が必要な様子です。箔に縮みが出来るのを目安として熱を加え、様子を見ながら加熱を繰り返しました。

 
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 とりあえず試行錯誤の結果・完成

 途中、なかなか全体に綺麗に密着せず、様子を見ながらの作成となりました。
 明らかに、銀や金より箔を合わせるためには、熱、時間が必要なようです。

 
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 金箔で一部失敗はあったにしろ金や銀での不安はそれほど無く、メインのプラチナ箔がノウハウ的にまだまだ心配です。

 追試実験を試みて見ましたが、今回は失敗。
 闇雲に温度を上げても良くないようです。箔合紙が焦げすぎて劣化、箔もくっついてしまいました。

 単純にアイロンで熱と圧力を加えるだけではなく、熱を加え、箔にちりめん状のシワが出来たらそれを目安にアイロンを外し、板でサンドイッチ、10分ほど重量をかけて圧着、出来たものにもう一度熱を加えて、更に圧力を加える・・・・・(参考・金箔の焼き合わせ 日本画の描き方・林功さん)と言ったやり方を試してみる必要がありそうです。

 失敗が有用な体験となりました。

 
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 紹介の画像は、私の手持ちの箔、それぞれ。切り回しというのは、箔を作る時、四角く整形する折に出る端切れ?のようなものを集めたものです。砂子などを大量に撒く折など、せっかくの四角い箔を潰すのは大変もったいないこと。グラム単位で購入できます。また、平押で箔を張った時に出る余分もこれと同じに使えます。

 別打参枚掛というのは、通常の三倍の厚みを持った特別の箔。こうした箔も売っているのです。特注で、厚みの違う箔も作ってもらうことが出来ますね。尾形光琳の紅白梅図屏風再現のおり、江戸時代の箔の厚みを模して作ってもらった薄い銀箔もこうした種類の箔です。
参考 国宝 尾形光琳作 紅白梅図屏風の描法再現 記録
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/kouhakubai/index.html

 たしかに一から十まで全て画家本人が描き、作り上げたという場合もあるでしょうが、その材料をどこまで自分で作る事ができるかといえば程度問題です。和紙や、絹、織ったり漉いたりはやはりその道のプロがいます。箔、絵の具作りもしかり、金屏風、銀屏風、もちろん屏風作成もしかり。

 表具屋さんの存在と同じように、箔押し、切箔などの加工にもやはり箔のプロが画家の制作作業をサポートしていたと聞いいたことがあります。実際、正方形の切箔、細長い短冊、野毛(画像・箱に入って並んでいるもの、正方形の大きさの違い、太さの違いがあります・料紙作成などで使われる方もいるのです。)など、現在でも純金のものは、日本画材専門店の一部で購入可能です。というわけで?絵描きとしてプラチナの切箔がもし欲しい、使いたいとなったおり、職人さんのお力を借りるのもひとつ!と思った次第。

 出来ないわけではないけれど、やはりプロの力!は、使える時は使ったほうが結果がよいように思います(自分でやるとなるとそれなりの時間が必要になるのですから・・・)