森山知己ロゴ
9/2//2014  材料技法

「白象図」「山水晨明図」制作

■ アートガーデン個展、「白象図」「山水晨明図」制作の様子を紹介します。
 
bin090201.jpg

 

六曲一隻「山水晨明図屏風」です。岡山市南方にある真言宗のお寺「長泉寺」の宮本光研さんから制作を依頼されました。この地に寺が生まれそして今に至る歴史、いわゆる「縁起」を絵にして欲しいと頼まれたのです。
※以下URLをクリックすると大きく表示されます。
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newimagepic/allshinnmei.html
 

 
bin090203.jpg

お寺が創建された1500年頃の姿は、誰も実際には見ることが出来ません。絵を描くにあたって、どのようにしたらそれを身近なものとして感じてもらえるかを考え、あえてお寺は現在の姿をそのまま描くことにしました。小下絵を作り、構想を何度か練りなおして大和絵、俯瞰図で描くことを決めました。寺の建物、その構成、それぞれの具体的な姿形、まずはお寺に何度か取材に行き部品となる資料スケッチを始めました。(桜の咲く頃の話です)
 

 
bin090202.jpg

実際に存在するお寺の建物は、誰が見ても嘘かホントか確認できるものです。慎重に構成を整え、建築物のみの下図を作りました。その後、岡山平野、見える山並みを実景の取材から絵に合うように構成しなおし、創建当時に存在したと思われる寺社などを加えました。また、実在する寺の建築物については、金の雲、砂子を撒くことに寄って夢の世界、タイムマシンによって現れた世界として描く計画としたのです。

小下絵をもとに原寸大部分下絵なども作ったあと、墨を使って全体の線描き、調子付が終わった段階です。小下図・計画の段階での確認に続いて、実物の大きさで全体の構成についての確認をしてもらいました。
 

 
bin090204.jpg

全体への地塗りが終わったあと、それぞれの箇所の下塗りをし、全体の調子を確かめるためにもと金砂子の雲などにも一段回目の色を入れた段階です。

明るい色から、暗い色。細かい絵の具から荒い絵の具。基本に忠実な作業が続きます。

薄塗りで仕上げることを想定しているので、下塗りも完成時に絵が固くならないよう、注意し、頻繁に暈しながら行っています。

画面上方、遠い場所からより具体的な色となるように作業を進めています。
 
ちなみに絵の上を横切っている板は、「乗り板」と呼びます。屏風の上に体重、重量がかからないようにこの上に乗って描きます。また左上に見られる白い板は、ベニヤ板を紙で包んだものです。これも屏風の骨の上に直接面として乗せます。この上に乗って描く場合もあります。
 

 
bin090205.jpg

お約束?の夢の世界、金砂子による雲を描いています。一度で厚み、密度を出そうとせず、何度にも分け、乾いては撒くを繰り返します。

 
bin090206.jpg

各所に一応色が入り、全体像が浮かび上がってきました。主役である長泉寺の建物他を描き込みます。

遠くから(画面で奥行きとなる)徐々に完成に近づけるよう描き込みを進めています。空、山並みを夜から朝焼け、「晨明」な雰囲気が出るように調子付を行い始めた段階です。
 

 
bin090207.jpg

旭川の様子、またお寺の廻り、薬草園、人物、右下手前の操山、、、まだまだ細部が出来ていませんが、完成が近くなってきました。

それぞれの細部をより描き込み、夢の世界としての金砂子による暈しを寺の周り、緑の上に撒いて完成です。

 

完成図は下記URLをクリックすると表示されます。
「山水晨明図屏風」
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newimagepic/allshinnmei.html

 
bin090208.jpg

 

六曲一隻「白象図」です。尾形光琳作、国宝 「紅白梅図屏風」の流水表現、せっかく関わったからには、その技術を用いたオリジナルの一枚をと思い制作することにしました。「線」を活かして大きな絵を描いてみたい。モチーフとして選んだのは「白象」です。宗達の描いた「白象」が頭に浮かんだのです。

※以下URLをクリックすると大きく表示されます。
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newimagepic/hakuzouzu.html

 
bin090209.jpg

屏風の上に線描きを終え、銀箔を貼る部分に薄墨を塗っています。何度か箔下地としての捨て膠を塗りました。(乗り板の上の白い角皿には捨て膠用の膠液が入っています。)

 
bin090210.jpg

銀箔を貼っています。今回は堀張り、象の体、牙となる部分には銀箔を貼らないようにしています。(象の鼻の頭、牙の上に乗っている箔は、乾燥後払うと落ちるように接着されていません)

 
bin090301.jpg

貼られた銀箔上に礬水液によって流水を描きました。透明なように見えても、反射率はは変わり、確認のために逆光で見ているところです。

このあと、硫黄粉を撒き、静かに3日間反応させます。

 
bin090302.jpg

銀箔の硫化が完成したあと、同様に掘貼りで金箔を貼ったところです。象には下塗りがしてあります。また画面右上方のインド菩提樹も堀貼りを行っています。

 
bin090303.jpg

象の体へ胡粉を溜めるようにして塗ったり、牙に金泥のたらし込みをしたり、象のしっぽ表現では宗達の風神、髪の毛の描写などを参考に描いてみました。

屏風として折り曲げた時の立体感の表現なども加味した構図、はたして成功となったかどうか。
 

 

完成図は下記URLをクリックすると表示されます。
「白象図」
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newimagepic/hakuzouzu.html

2011年以後の屏風作品をまとめた表示です。題名の部分をクリックすると別画面で大きく表示されます。
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newimagepic/index.html

それ以前の屏風作品はこちらを御覧ください。
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/byobu/index.html

 
bin090304.jpg

上記のほか、「水の記憶シリーズ」の新作、硫化の技法と金箔だけで画面を構成した「光シリーズ」、また琳派のたらし込みを用いた桜扇面、椿なども出品しています。

会期も残り1週間。