「玉堂に倣う」奥田元宋・小由女美術館ワークショップ
美術館の永井学芸員と今回のワークショップを計画する中、参加者は玉堂絵画らしい何かを体験し・なおかつオリジナルな一枚の絵として完成させることを目標としようという話になりました。 2日連続のワークショップだからこそ可能になる体験・表現の可能性。 これまでこうしたワークショップを引き受けたおり、もどかしい思いがあったことも事実なのです。作画工程で全体に絵の具を塗った場合、もしくは全体を湿らせた場合、どうしてもワークショップ時間内では乾燥時間が足りず、諦めねばならない表現・技法体験があったのです。今回は、それが!実施可能となったのです。 玉堂らしい潤いのある彩色・画面。「水」をふんだんに使うからこその表現、暈し、グラデーションを用いた彩色にチャレンジしました。
参考にするのは、この季節らしい絵、玉堂の代表作でもある「夏川」(昭和28年)紙本彩色の作品です。 取り組む絵の大きさ、諸処の事情から現寸大のそっくりな模写を行うというわけにも行きません。あくまでこの絵を参考にしながら描く技術・作画の工程を二日間で可能な要素に分けて取り組みました。川の流れ、中洲の様子、「下塗り」の工程で暈しを用います。
線描きが終わったら、この工程で必要な絵の具を全て準備し、 全体に水を引いたらそれが乾かない間に一気に全体に絵の具を行き渡らせます。 コントロールしたい所にはたして絵の具を動かす事ができるのか?連筆の使い方、刷毛の使い方、天然絵の具の持っている性質、美しさを自分自身で体験です。玉堂と同じことを行おうとすれば、材料は同じ!、媒介となる水の性質がその必要な時間を教えてくれるのです。1日目はこれで終了、一晩乾燥させます。
二日目、「下塗り」の乾いた状態に「描き込み」を加えます。 細部の観察が役に立ちます 「実際に自分で描こうと試みたことで、玉堂の凄さがより実感を伴って感じられました!」 1日目の終了後、閉館間際の展示室に駆け込み、しっかりともう一度見てきたのだそうです。
川の流れ、はたして自然の理に添って描けているかどうか? 自分の考えた構成がはたして、描かれた魚釣りをする人たちにとって整合性があるかどうか? 水に濡れた岸辺の小石の色、ニュアンス。光に照らされた場所の白さとは異なります。また流れが変わることで見せるさざなみの様子も見て取れるのです。
一泊した三次の街。一日目の夕方、ホテルから出て歩いてみました。鵜飼が行われるという川。赤い橋を渡って対岸に行けば、古い町並みに出会えたのだとか・・・・。 記録するテクノロジーとしての運筆の話、玉堂の弟子である児玉希望の「一鷺栄華」の製作工程研究の映像鑑賞など、盛りだくさんのワークショップとなりました。永井学芸員からは「絹」も!というリクエストが有ったのですが、今回はちょっと無理でした・・・・。 はたして参加くださった皆さん、楽しんでくださったでしょうか。 喜んでいただけていれば幸いです。お疲れ様でした。 時はゴールデンウィーク!、美術館を出、高速のインターへ向かおうとすると小雨にもかかわらず車列が並びます。渋滞!!!。やっとの思いで美術館付近を抜け、すんなりと中国自動車道に乗ったと思ったら、ふたたびすぐに渋滞の表示。開通したばかりの尾道、松江道(通称やまなみみ街道)分岐が混んでいた様子、長〜い渋滞の列を横目で見ながら一路岡山へ。岡山道も混んでいました。家に帰り着いたら、今度は、久々に長〜い停電。ロウソク、懐中電灯で静かな時間。
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