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6/19//2015  材料技法

日本画らしいスケッチについて

■ 日本画らしいスケッチとはどういうものなのか?
もともと<「日本画」という言葉自体が定義できないもの>という考え方もあるので、日本画が果たしてあるのか無いのか、その事を確認しようと試みるおり、川合玉堂の言う「日本画は描法に重きをおかなければならない(日本画実習法 第五編 花卉鳥獣の描法 一、写生法)この「描法」に注目して考えてみることもひとつの手がかりになるように思う。
 
 
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 季節の花「ガクアジサイ」は、はたしてどのようにスケッチすることが日本画らしいのか?


1:日本画には日本画の写生法があるから洋画風に似せてはならない
2:洋画は全体の感じで描くが日本画は細い線でそれを描く
3:絵としてただ(写真)撮影した以上の美化された感興が必要である
(※日本画実習法 第五編 花卉鳥獣の描法 一、写生法)

 
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 日本画家のスケッチ(素描)を見たことがあるだろうか。美術館で行われる最近の展覧会では素描や下図を参考として同時展示することが多い。絵の具の名前が具体的に描きこまれていたり、描法と思われる作業が書き込まれていたりする。模写や臨画などの基礎練習で得た技術や言葉が描こうとする対象物を具体的に見る方法、手がかりとなっているのだ。

 特徴的な姿を理解するためには、分解図も必要になる。花びら一枚一枚の形、組み合わされる構造、設計図のように分解して理解を試みることが、光と影で現象的に見えたこととはことなった視点を作ってくれる。
 

 
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大輪のバラの花 

まず、どの角度から、どの位置から見ると美しく感じられるのか?

<正確に物を見る訓練とそれを描き出す訓練からはじめなくてはならない>
そのためには、描こうとする対象物との距離も考えるべき重要な要素となる

 
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描こうとする位置、見るポジションが決まったら、正確な形を捉えるために視点の移動が極力ない姿勢をとることも重要なことになる。測量機、測量点が狂っては正確に大きさや角度を計ることは出来ないからだ。

距離は、眼球を動かさずに全体像を見渡す意味で大きい。描こうとする対象の最大サイズの対角線の二倍程度(昔どこかで聞いた話・・・)離れると、安定して全体像を見ることができるそうだ。
画像のように鉛筆を使って角度や大きさの比例を測ったりするが、肘の位置、角度、目と鉛筆の距離も重要になる。比例を正確にするためにも鉛筆は自身との距離を一定にし、自分の目に対する角度も一定にできるように努力する。

 
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 まずはメインになるような角度、位置から描く。うまく行けばそのまま下図に直結できるようなスケッチが出来るかもわからない。

 このスケッチがゴールではないのだから、気づいたことなども画面にメモしておくと下図づくりにおいて有用な情報となったりする。

 

 
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メインとなる角度以外にも、横からのスケッチを同時に試みておくことで、花の構造、奥行きをより意識し、花全体の理解へと繋ぐ。この時、花と茎の接合部などもよく見ておくと、正面からではわからない、たとえ実際に絵の中に描かれない花の首であったとしても、生き生きとした表情、茎と花の関係を描き出す手がかりになる。

 
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同様に花の後ろからも描いておくと、より構造を理解することが出来る。花びら一枚の形、中心からの花びらの重なり、つき方なども見やすいのだ。

同様に蕾もいろいろな位置、角度からスケッチしたり、花の茎、枝分かれの様子や、葉のつき方、複葉なら花に近い場所から地面に近くなるに従ってどのような葉の構成が見られるかなどといったこともスケッチしておくに越したことはない。

アジサイにしてもバラにしても、裏側からの視点をてがかりにして表から見える姿を描くことでよりリアリティーのある形や、美的な変更を行うための手がかりとなる。