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10/10//2015  材料技法

和紙原料 楮(岡山県笠岡市産)

■ 和紙の代表的な原料として知られる楮(コウゾ)。薄美濃紙などの薄くても丈夫な和紙に使われていることは知っていましたが、ここ岡山県、それも県南の笠岡市で生産されていることは、これまで知りませんでした。
岡山市で和紙販売をされている「わがみやうめだ」さんからご紹介いただき、昨日、現地を訪ねました。
 
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日本画研究会の開催他、ご当地、笠岡市立竹喬美術館とのご縁も有り、訪問を徳山学芸員とご一緒しました。画像中央に茂っているのがコウゾの木です。

この画像で最大地上高4.5m程度、この高さまで一年で成長するそうです。


※和紙原料としての出荷には、規格があり、約1.5mの長さに裁断し、その後必要な部分のみを加工して取り出し、出荷されるそうです。

 
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是非とも葉の元気なうちに訪問したかった。
何故なら、楮という名前こそ知っていましたが、私自身がどんな植物なのかをよく知らなかったからです。

葉の形から、桑の木を連想しましたが、やはりクワ科の植物でした。

場所は、かつて海であった干拓地です。ときおり潮の香りが風に乗ってしてきます。

近くにはイチジク畑もあり、聞く所によると、イチジクもクワ科の植物なのだとか。笠岡市の特産品ということで、この種の植物にとって生育に適した環境であるようです。

 
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画像は楮畑、案内くださった石丸さんです。背丈を越えてまっすぐに成長している様子がわかると思います。

何箇所か作付されており、楮の種類も3種類ありました。マダカ、マソ(真楮)、フソ などあるそうです。高知県産の100株を10年前に植えつけたそうです。

 
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楮の皮を剥くために蒸します。画像は焚き口と水を入れる釜です。

この上部には、原料(水を張った釜の中に各1.5mとして裁断し束とした楮を垂直に立てたもの)の上から蒸気を逃がさないように覆いとしての樽を吊るすためのフレームや滑車などが手作りであります。

後ろに見ることが出来る逆さのバケツは、煙突接続部です。使用しない時に雨が入らないようにしています(使用時には煙突が接続されます)

 
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上記で説明した上からかぶせる樽です。

グズグズと緩んだ様子(実際に緩んでいました)ですが、一度蒸すと、水分を吸いちゃんとした形になるそうです。なお見るからに年季の入ったこの樽は、すでに別の場所で使用されていたものを譲り受けたそうです。

目測ですが、高さ1.6m程度ありました。

 

工程  1月頃、伐採 > 裁断 > 蒸し > 皮むき > 
向いた皮から鬼皮(茶色い外皮)青皮(内部皮)をはがし白皮にする > 木灰を使って煮る > 晒(川などの流水に流しアク取り、塵取り) > 乾燥 > 出荷 
※川晒し、雪晒し・・・漂白に関係することもある

上記の乾燥以後 > 打解(木槌で打って繊維をバラバラにする) 和紙原料となる 

 
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案内くださった栽培家の石丸さん!。ご自身でも(プリミティブな)紙作りを行っておられました。

和紙産地で見ることの出来る、「川ざらし」は、ここ笠岡の何処で行うのか?
なんと!、海!!!!塩晒楮 もしくは潮晒楮(しおさらしこうぞ)と名づけてらっしゃるそうです。

 
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叩解(こうかい)作業は大理石の上で木槌でたたきます

塵とりなどもこのおりに行うとのこと。

 
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私達が訪問するということで、事前にそれぞれの作業を準備してくださっていた様子。
実演していただいたことが有りがたかったです。感謝!。

 
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そしてそれを並べ敷き詰めます。
再び叩き、圧力をかけ その後乾燥

 
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楮自体から出る物質、性質により、自然と繊維が接着されシート状態になります。

 
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石丸さんが作られた非常に原始的な紙とその原料です。

資料としていただいて帰りました。

岡山には三叉の産地もあります。真庭では若い方々がその三叉を使って樫西和紙を作られているとか、また美作・津山では、以前お世話になった横野和紙上田さんがいらっしゃいます。豊かな地域、この豊かさをどのようにつなげていくか・・・・