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5/25//2016  材料技法

樫西和紙 岡山県真庭市

■ 岡山県の北部中央に位置する真庭市。三椏を主たる原料とした手漉き和紙の産地である樫西和紙工房を訪ねました。
 
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伝統と呼ばれるようなある種の文化は、日常生活とともにないと継続が難しい。日本画がこの国の美意識、価値観の一つの発露なら、その材料となる和紙生産の現場は、はたして今どのような状況なのか?。県内の和紙生産、また和紙の原料栽培や、生産現場が現在どのような様子なのかを確認したいとここのところ動いています。昨日、真庭市にある樫西和紙工房を訪ねてきました。
 

 
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山深い場所、正面、山並みにかかる高架橋の姿。米子自動車道の橋脚の下に工房はありました。

 
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樫西和紙工房の小川秀雄さん。冬に皮剥きのみを行い乾燥させて保存していた三椏を湯で戻して黒皮、青皮を取り去る作業を行われていました。力の必要な作業であること、重労働であることがわかります。

楮の真っ直ぐな棒状とは明らかに違ういかにも三椏(3つに別れた材・三又)といった原皮の姿でした。

 
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どのような場所で生育した三椏なのか?

太陽のあたり具合、肥料の具合、生育の様子など。原料皮の処理をしているとわかるというお話が印象的でした。日当たりの良い場所、すくすくと生育した木は、皮も剥きやすいのだとか。

このような形で乾燥させ、保存できる状態にします。

 
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皮を剥かれたあとの三椏の木です。3つに枝分かれした様子がわかります。

花屋さんで着色、塗装された素材として見ることも有りますね。

乾燥をうまくしないとカビがつきやすいのだそうです。

 
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5月末近い現在の三椏の様子は、黄色い花が萎れ、緑の葉が元気な様子です。

 
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叩解機から細かく細い繊維を取り出す濾過機、そして漉く船の入る場所へと水の流れ、高低差をつけ機能的にデザインされた工房の様子。

 
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紙漉き作業は行われていませんでした。

ネリについて、塵取り等の作業についてなど、いろいろとお話を聞くことが出来ました。

 
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ずっと作業を続ける小川さんに変わって案内、説明と対応くださった星野さん。

創作染和紙制作、染色、デザイン等で樫西和紙工房に関わられ、もり立てられているとのこと。需要に答えるのが大変という話は、印象的でした。話を聞いているのは、天神山文化プラザの福田学芸員です。

 
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和紙制作工房に併設された円筒形の直販所。

 
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販売所におかれていた裁断機。現役で使用されているとのことでした。
創作染め紙もたくさん展示販売されています。

 
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楮、三椏のブレンドも様々な和紙。
土をいっしょに漉き込んだいわゆる<まにあい和紙>を製造していることには驚きました。聞けば東京の有名和紙店よりの注文によって制作しているのだとか。

最大で2・3版、一番小さなサイズは名刺版でした。
 

 
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山間の綺麗な川の流れ。旭川の源流となるのでしょう。落合の醍醐桜はこの下流の山になります。

岡山県北の和紙製造の現場、意外な連携の存在もお聞きすることが出来ましたが、逆に一蓮托生、危うい現状を意識することにもなりました。三椏栽培・原料の確保も難しくなっているとのこと、また製造の現場、後継者がいない現状。



ぎりぎりの状態ということを実感を持って知る機会となりました。
対応・お話をお聞かせくださった樫西和紙工房・小川さん、星野さんに感謝です。