神代和紙 岡山県新見市神郷
伝統と呼ばれるようなある種の文化は、日常生活とともにないと継続が難しい。日本画がこの国の美意識、価値観の一つの発露なら、その材料となる和紙生産の現場は、はたして今どのような状況なのか?。県内の和紙生産、また和紙の原料栽培や、生産現場が現在どのような様子なのかを確認したいとここのところ動いています。昨日、新見市にある「和紙の館」を訪ねてきました。 かねてより知っていた新見で漉かれる「高尾和紙」を一度調査にと考えていたのですが、すでに現在では漉かれていないという情報をもらいがっかりしていたところ、別件で知遇を得た若い漆作家の方(なんと市の地域おこし協力隊員として埼玉より来られた加藤さん)にこの神代和紙の存在を教えていただいたのです。
目印は巨大な水車。巨大な木。立派な施設です。ご一緒したのは、来年の天神山文化プラザ企画展参加のメンバー。今回の情報を下さった加藤萌さんの案内です。加藤萌さんも参加者のお一人なのです。
「紙の館」での紙漉きは、なんと近年、復活!したのだそうです。また神郷で漉かれる神代和紙は、実は歴史的に高尾和紙より古くから漉かれていたということもお聞きすることが出来ました。
お相手くださったのは、忠田町子さん。我々のためにわざわざ紙漉きの準備をして待ってくださっていたのです。※画像は材料の繊維(神代和紙 楮90%、三椏10% ネリはトロロアオイの根)を撹拌しているところ。
驚いたことに、簀が新しい!。設備も立派です。役場が新品のこうした道具を何セットか保存、持っていたのだとか。別のところにあった機材他が新たにここに集められ、また若い後継者も育ちつつあるという話をお聞きすることが出来ました。
紙漉きを実演してもらいました。繊維を水の動きによって均一に堆積させていく様子。水の動きのコントロールです。水中での絵の具の動き、膠の働き。ネリの働きがある意味で膠と同じなのかもと想像してみたり。どちらにしても「水」をいかにコントロールするかが勘所。
漉いた紙を重ねて、この後、水切り(脱水)、そして乾燥工程に入ります。忠田町子さんが愛情を持って取り組んでおられる様子、備中和紙や、横野和紙に紙漉きを学びに行った話など聞くことが出来ました。もちろん樫西和紙とも縁が深いとのこと。高尾和紙もある意味で兄弟のような存在だったようです。
温水による乾燥機。ステンレスの板に張り付けて乾燥させます。
立派な工房です。昔訪ねた徳島のアワガミファクトリーを思い出しました。あちらでは巨大な和紙を漉くための機材が印象に残りましたが、室内空間だけで言えばここもかなり大きな施設ということが出来ると思います。ただし漉いているのは、いわゆる2尺3尺の大きさのみとのこと。この他イベント用の小さなうちわ漉きとかがあるそうです。
ネリの材料、トロロアオイの根です。これを石臼で潰し粘りを作り出すのだとか。材料・材料確保についてや工程のことなどたくさん教えてくださいました。若い方々が工房に出入りし、漉き始めているという嬉しい話も聞くことが出来ました。一方で原材料の確保が難しくなっていることも。現状を知ってもらうこと、そして新たな魅力を見つけ使ってもらうこと。なにかしら出来たらと思うところです。忠田町子さん、加藤萌さん、ありがとうございました。※ 参考 樫西和紙 真庭市http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2016/052501/index.html※ 参考 和紙原料 楮(岡山県笠岡市産)その2http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2016/021001/index.html
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