屏風の構造
6月1日が制作スタート。「屏風」、それぞれがこれから制作する構造他、まずは「対象を知る」ことからスタートしました。実際には作りながら理解を深め、そして知ることになります。限られた制作時間内で完成を目指すこと、加えて糊刷毛などに触るのもはじめてといった大勢の学生の取り組みです。和紙などの伝統的な素材、屏風の構造にその作り、制作作業のなかでの出会いの体験は、得難い機会になるに違いありません。
まずは糊のこと、刷毛の扱いから。「骨締め」「骨縛り」など本来の作業工程、存在の紹介をしつつ、今回の特別製作におけるやり方を学びました。(すでにある程度下仕事のしてある材料を使っています)和紙の裏表、和紙の切り方、糊の付け方を学んでいます。
「はい、説明は終わり」「実際に手を使い、制作をしながら学んでいきましょう」初日、取材の方、記録の方も来られました。
一日目は、骨締め、骨縛り、和紙を貼り重ねます。糊の付け方、貼り重ね方、こうした作業を行う意味など実際に作業を行うことでそれぞれ実感を伴った記憶となったに違いありません。この段階、なぜ紫の紙が見えているのか。紙のどの位置に糊をどのようにつけたか。そしてどのように貼り重ねたか。この貼り重ねられた和紙の果たす機能。湿度の多い国での屏風、また音に対する感覚。襖などの建具にも共通する知恵を知ることが出来ました。
糊の付け方を変え張り込む作業。今度は縁ギリギリ、全面に張り込みます。
両面全てに貼ったら終了。一日目の作業はここまで。何事もはじめての作業。もたもたとした動きも一日目終了の頃には段取り、手際も良くなりました。
二日目は、屏風の勘所「丁番付け」です。どちらにも折り曲げられる構造の実現はどのようにして作られるのか。自ら実際に作成することで理解は深まります。これからそれぞれが独自の造形を行うときのヒントになったことと思います。
反古紙、昔の大福帳に使われた紙を使用しての丁番づくり。表具師の方々の持ち寄りによってすべての屏風(7つ作っています)で同じように行われました。糊を付ける部分、刷毛の扱い、コテの扱い、胴付鋸も使いました。
裏表、どちらにも折り曲げられる構造の実現。その折に使う「あいす」の重要さ。二日目の作業はここまで。
三日目は、両面全体に「受け」を貼ること。本紙を貼る前の重要な作業です。
「受け」が貼り終わった姿。最後は霧吹きを全体にかけて三日目の終了です。それぞれそれらしい姿になってきました。1回3時間の作業を3日でここまで。三宅さんを中心に指導にあたってくださっている岡山県表具内装協会の皆さんの熱意あるサポートに感謝です。授業自体はここで一休み。来週は、実際に倉敷の街に出て取材、倉敷屏風祭についてを学びます。さて、それぞれがこの屏風に何を描き出すか。両A面、裏表両面に制作をと取り組んでいます。
授業の合間に私自身の質問も。職人の世界。本来、こうしたことは弟子入りして、見て盗む、学ぶ存在とのこと。天神山文化プラザでの「表装」展での実演、「掛け軸ができるまで」も稀有なことなら、今回の試み、屏風づくりを公開で行うなどなかなか無いことなのです。貴重な作業、ノウハウの公開、指導に感謝するばかりです。
骨縛り、骨締め、弟子筋呼び方は違えどそれぞれの作業の意味など具体的に見せていただくことでの気付き、理解。音についてやこの国の気候、季節に対する対処の深さ、歴史についてをたくさん教えていただいています。表具師さんに来ていただいての屏風の制作は、残りあと3回。学生たちは、何を描くか、どのように表現するかにこれから具体的に取り組むことになります。倉敷という街に芸術大学が存在し、連携する意味。地域、街の賑わい創出にアートがどんな関わり方ができるのか。また連なる歴史、伝統をどのように捉え、加えてその一部になることができるのか。ワクワクドキドキ、楽しんで取り組みたいものです。
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