鏡の松制作 その8
かねて表、裏、表とドーサ引きを行って準備していた檜板材をアトリエに広げました。高約267cm幅約560cm木材自体、昨年7月に製材されたおりからいえば、かなり収縮しました。もちろんそれを見越して大きく作っています。
10分の一下図を基準に、下図で5センチならば、板の上では50センチとそれぞれ縦横の位置関係を確認しながら当たりをとり、木炭を使って描きこんでいきます。竹制作では、原寸大下図を作りましたが、こちらは直接拡大を行います。大きな作品を作る場合、直接の視覚だけに頼って行うと、全体を一度に見ることが出来ないため、比率の崩れ等を起こしてしまうことが多いものです。私が聞いたところによると、描こうとしている画面の対角線の二倍程度のディスタンスを絵と取らない限り、一度に全体を見ることが出来ないということです(人間の視覚(視野)と脳による認識の関係)。同様に、大作でなくてもこうしたこと(画面全体が一度に視覚としてみえない状況)は多く、特にデッサン等の訓練を積んでいない場合、狂いは大きくなります。デッサンを学ぶ意味の一つに視覚において騙されやすい脳を、訓練によって対象のバランスなど正しく把握する力を養うことがあるのです。大作制作の場合、特に今回のように古典的作画プロセスが重要な場合、詳細な下図づくりが重要になります。
参考:切戸口壁面 竹図(原寸大の大下図を作って作成)大下図を作る意味は、形が狂わないの他に、画面を汚さないということもあります。特にプロセスに失敗が許されない場合など細やかな準備が必要になるのです。画像は合成して作りました。右上の暗さは照度が足りないためです。中央部が明るいのは逆光の反射があるためです。
木炭による下図の原寸写し取りが完了しました。バランスを確認します。小下図では必要のなかった細部についても、このタイミングで詳細に描くための下仕事(細かい枝、松葉の付く軸の動きなどの決定)をしておきます。
油煙墨(膠分の強い)により、木炭であたった見当を手がかりに骨描きを行います。輪郭線だけの場合もあります。今回は、松の幹に見られる樹皮の質感表現を加えたいので、そのあたりも描きこんでいます。
松の幹の部分、すこし強めに骨描き、表情を加えています。このあとの地塗り、下塗りの折に行う塗り方を想定してこのようにしました。※明るい色調で描きあげるときはこのように骨描きを増やさないほうがよいと思います。今回は質感表現のためのアプローチです。また松葉もどこに中心を置くかなどガイドになる線を木炭で入れました。
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