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4/26//2020  材料技法

鏡の松制作 その9

■ 地塗りと下塗り(その1)
 
 
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胡粉+黄土(水干)+墨(少量)による地塗りを行います。

地塗りは、
1)骨描きの墨の線を和らげ、このあとの作画の助けとします。
2)支持体(今回は木材)の表面を上記絵の具を塗ることで整え、これからの作業の土台(これから塗る絵の具の安定な定着のための下地)を作ります。
3)地塗りに用いる膠は特に重要です。これからの作業の土台になるのですから、強くてまた柔軟性のある膠がポイントとなります。新しく作った膠、それも溶かす水の量にも気を使います。標準より少し濃い膠です。


ちなみに混色によって作る地塗りに用いる絵の具の色合い目安は、支持体の色合い、明度などが基準となります。支持体の表面に近づけます。ただし、今回の場合、背景部は木肌がそのまま露出ですので、経年変化があり、板の色が暗く変化しても絵の邪魔をしない色であることも重要です。

黄土と胡粉がベースで、墨で明度をコントロールします。黄色系の地塗りは、上に重ねて塗る絵の具の邪魔をしにくく、黄土が安定な絵の具だからです。
 
加えて、絵の具の濃度についても、描こうとしている対象物をより表現しやすくする工夫が必要になるときもあります。

 
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これだけ大きな制作になると、一度に作れる絵の具で全体を塗れないことも出てきます。

色の変化を効果的に使う工夫もあります。

また一度で必要な濃度が出せない場合、質感表現を加えて堀塗りによる作業をしても良いと思います。(松葉の付く細い枝部は二度塗りにして堀塗りにしています)

 
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松葉の塊、少しずつ色(加える黄土、墨の量)を変えて色の多様性を作っています。

松の幹の部分、樹皮の表情を加えるため2度めの地塗りでは堀塗りをしています。
 

 
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松葉は緑、下塗りはその固有色の緑の一番明度が明るく、粒子の細かい絵の具を塗ります。

ちなみに今回は、白緑(松葉緑青の白)を塗ります。

大切な土台です。膠の量、多くなりすぎてはいけませんが、安定な定着となるようにしっかりと絵の具を溶きます(余分な膠を残さず、強い膠が絵の具の一粒一粒にしっかりと付くように混ぜる)

松の小枝など重なる部分は堀塗りにして質感の違いを作っています。

今回のような大作となると、白緑の面積も大きく、大皿で絵の具を溶いたとしても何度も溶かねばなりません。

(作業は、まだしばらく掛かりそうです・・・・)

 
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松葉の白緑下塗りを作業中。
下塗り作業の途中。松幹部については、地塗りを二度塗り、二度目は堀塗りで表皮の質感を表現。