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5/2//2020  材料技法

鏡の松制作 その10

■ 下塗りの完成
 
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松の幹の部分、黄土系の絵の具を重ね、墨線を彫り塗りする部分を作ることで、樹肌の表情下地を作っています。今後最終的な完成にむけては、煩雑に感じさせないように、描き込み等を通じてまとめ、肌を整理していく予定です。

松葉の塊については、白緑の下塗りを一層、まず塗っています。
支持体の檜については、木材の性質から水分が染み込みにくく、油分が出てくるということもあり、経年変化等(膠の加水分解)を考慮して、少し強めのドーサ液を塗っています。

このため、雁皮や鳥の子に描くような様子で、絵の具のムラが出やすく、白緑の二度塗り、二層にすることで、ボリューム感を出す計画で進めました。
 

 
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松葉の下塗り一度目の終了です。

手前の松葉部分など見て分かる通り、近づいて見ると、塗面の白緑はムラがあり、地塗りがかなり透けてみえています。

今後の着彩における土台となる下塗りなので、少し強めの膠で安定な面を作ります。
 

 
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松葉緑青(白)、いわゆる白緑一度塗りの終わった段階。最上部右は二度塗りにすでになっています。

 
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二度塗りした状態です。
松葉の部分にボリュームが感じられるようになりました。

先の画像と比較すると、画像でもある程度違いがわかると思います。

 
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「下塗り」の終了。

次の作業は、染料系の絵の具を使った描き込みです。全体に具体的な描写を行います。これはその後に続く岩絵の具の着彩において、ことさら説明的とならないためであり、それは最終的な装飾性につながると思います。

※「下塗り」は、基本として文字通りこれから描く対象のボディーとなる層です。描く対象の固有色と考えられる色で、もっとも粒子の細かい絵の具、明度の高い絵の具を塗っておきます。このおり、硬いものは絵の具の量を多くして厚く、薄く透けるような素材や柔らかい素材の場合は絵の具の量を少なくしておくと質感表現に役立ちます。

松の幹に胡粉の下塗りという選択もあると思いましたが、今回は黄土を混ぜ、黄色系統の下塗りとしました。今後塗るであろう、胡粉等の発色を際だたせるためにもと少し墨を混ぜて彩度を落としてあります。