吉備胡粉 岡山発の絵の具
勤務する大学他学科の教員(胡粉の新しい使い方に関係!)から、山陽クレー工業株式会社さんが私に会いたいとおっしゃっていると連絡をもらいました。要件は、昨年の山陽新聞記事で気になっていた「胡粉」に関してとのこと!!!。もちろん、私も「気になっていた」と、二つ返事でOKです。・・・というわけで、すでに「吉備胡粉」とネーミングも決まり市販も始まったとのこと、試す機会をいただきました。画像は、いただいた「吉備胡粉」サンプルと山陽クレー工業株式会社さんの資料です。■山陽クレー工業株式会社水を利用した「湿式製法」、空気を利用した「乾式製法」、2つの工場をもち、幅広い粒度の粉体(数ミクロンから数十ミクロン)を製造する会社とのことです。湿式製法とは、伝統的な日本画絵の具製造を機械化した手法のように思います(機械化による違いはもちろんあると思います)。当然、乾式製法にも興味津々で、いろいろと質問してしまいまいました^^;。また、岡山県工業技術センターの方も一緒に来られました。粒子の大きさ、粒子の水の中での動きについて、膠の働きなど、いろいろと教えてくださいました。加えて研究に協力してくださるとの話も!!。
サンプルとしていただいたのは、「吉備胡粉」粒度の違う3種類 ■200 ■100 ■60数字が小さくなるほど荒い粒子だそうです。このあたりは伝統的日本画絵の具の表記と同じです。「吉備胡粉」標準としているのは、■100だそうです。絵描きが出来るテストは、使い勝手、使用感、また使用しての結果(求める色、質感)となります。まずは、それぞれ同量をとりわけ、同じ膠を使って胡粉団子を作り、使用してみることにしました。比較用に私が普段使っているホタテを原料とした胡粉もテストに加えました。ちなみに、山陽クレーさんとの話の中、販売されている状態で「それぞれの粒子は、表記の番号通り分離している」とのことでした。もし本当にそうなら、通常私が行っている乳鉢を用いての胡粉の空擦りが必要ないことになります。このあたりも確かめたかったので、比較用は、乳鉢で十分(私自身の通常使用時と同じ)な空擦りを行ったものを使っています。 それぞれ5gを量り取りました。
使用する膠について古典的な膠です。
水180cc に 膠25g 上記の比率で作りました。乾燥して水が減るのを防ぐため、ラップで蓋をし冷蔵庫で一晩つけた後、湯煎して溶かしました。
それぞれ胡粉団子を作りました。1種類につき2個の団子とし、乾燥しないようにラップで包んでいます。団子作りにおいて感じた違い ■200 団子にするため思いの外、膠を必要としました。 細かい粒子ということで、膠の付く表面積が増えたのかも? ■100 ほぼいつもと同じ、比較サンプルと同じ触感で団子を作る事ができました。 乳鉢で擦ることを省略出来るかも。 ■60 雲母を膠で練ったときと同じ感じがしました。 一粒が大きくなり(トータルでの表面積が減少)、 膠の付き方が減ったため軽く感じたのかも。 あくまで上記で加えたのは個人的な感想で、科学的な根拠はありません。百叩きではなく・・・それぞれ団子にした後、皿に50回叩きつけました。
すべてのピースを団子にして並べた様子です。これから、1個づつ順に水で溶き、実際に使用テストを行います。(水に溶いてから、塗るまでの時間もほぼ同じにしました。)
実際に使用したテスト結果物です。和紙に下塗りしておきその上に塗ったものも2週類の和紙で行っています。(1.鳥の子色紙 2.鳥の子色紙藍の具塗り 3.和紙(繊維感が強いもの)葉書き具絵の具引き)感想1.「吉備胡粉」すべて 絵の具を溶き下ろしたおり、水の中に単に白い粒子のみではない少し明度の低いグレー系の粒子を見ました。同時にザラつきのような感覚を指先に感じました。感じた違いの原因として、粒子中に吸水性、硬度の違うものがあるためでは無いか?と推測しました(あくまで推測です)。上記のようなことの原因としては、原材料の確保の仕方、カキ殻の蓋の部分の使用など、原材料選別時の違いが旧来のものとの違いとなっているのではないか?と推測しました(あくまで推測です・根拠はありません)。2.溶いた絵の具は、それぞれ筆先に微妙な触感の違いは感じるものの基本的には同じように使うことが出来ました。3.塗っている時、塗り終わった折(乾燥していない状態)の見え方として、比較用の胡粉に比べ、白さが足りないように感じたものの、完全に乾燥した後は、結果的に大きな差を感じない仕上がりとなりました。比較のために用いた私の普段遣いの胡粉と比べると、ごく僅か(専門家でも分かる人は少ないでしょう)ですが光線(照明の違い)によって白さに質の違いを認められました。盛り上げ線を描くテストも行っています。盛り上げ線を描く上では明らかに「吉備胡粉」の有効性を感じることが出来ました。明らかに高く盛ることが出来ました。乳鉢で擦らなくとも(空擦りしなくとも)使用して、ほぼ同じ結果が出せるのはたいへん大きなメリットだと思います。結論として十分に使える!!!岡山発の「胡粉」の誕生です。岡山画の大きな財産となるでしょう。手触り、制作段階の使用感の違いをどう捉えるか・・・ベテランの方々でこそ、この違いは気になるかもしれませんが、経験の浅い人、ましてや初めてのユーザーなら全く問題ないでしょう、ましてやコスト!安く使えるなら素晴らしい存在になると思います。ゼミの学生とともに研究を進められたらと思っています。(いくつかのアイデアがあります^^)今回、個人的に嬉しかったのは、これまで感覚的に私個人が乳鉢を使って擦っていた粒子の大きさについて、具体的なサイズ(ミクロンオーダー)といったものを教えていただいたことです。指先の感覚に科学的な視点を加えることで、絵の具の溶き方と粒子の大きさの関係、膠の働きなどについてより知ることが出来そうです。山陽クレー工業株式会社様 得難い機会を本当にありがとうございました。また今回のご縁、岡山県工業技術センターさんにも協力いただいております。「吉備胡粉」購入に関する問い合わせは、山陽クレー工業株式会社様へ。http://www.sanyou-clay.com/news 吉備胡粉を活用して新規事業」9月2日(月)開始記事紹介には、参考価格の紹介もあります!!!(価格競争力あり!です)。岡山県工業技術センターhttps://www.pref.okayama.jp/site/kougi/index.html新商品開発で必要となる各種テストを受託、工業技術センターの設備機器を利用して試験、分析、測定、試作を行い支援しています。今回も粒子の大きさの測定など助けてくださっています!。私が普段使用している胡粉の粒子の大きさは?、絵の具の溶き方(狩野派の胡粉づくり、団子)は本当に意味があるのか?など、興味はつきません。第二弾記事で粒子の大きさについてなど紹介できればと思っています。
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