吉備胡粉 岡山発の絵の具 その2
山陽クレーよりいただいた情報です。「吉備胡粉」粒度の違う3種類 ■200 ■100 ■60 それぞれの平均粒子径の参考値 ベビーパウダー(当社製品SMT):9μm 吉備胡粉200:7μm 吉備胡粉100:9μm ← ベビーパウダーと同等 吉備胡粉 60:13μm注)上記、何故ベビーパウダーの粒子径が比較として用いられているかというと、私が日本画指導を行うおり、乳鉢で胡粉を擦ったおりの粒状感を生徒に伝えるおりに参考としている手触り例としているからです。山陽クレーさんにもその旨伝えて教えていただきました。
先日それぞれ別個に塗り分けてテストを行いました。その時の絵の具を溶くおり、もしくは湿っているおりの白さの違いについて言及しました。それぞれ2つ作った団子(一番奥:吉備胡粉60、センター:比較用ホタテ胡粉、手前:吉備胡粉200)を皿の上でまとめて溶く前の様子です。この段階で白さ、キメの細かさの違いがある程度見て取れると思います。 記事公開前に山陽クレーさんに情報公開の可否についてお尋ねしたおりの回答を添えます。山陽クレーさんの回答:-----------------------------------------------------------------------------記事内容に問題はありません。以下、当社の見解を記載します。@団子作りにおいて感じた違い 膠の付く表面積 60<100<200 で合っていると思います。A感想1 グレー系の粒子=牡蠣殻の表面側 だと思います。 「上記のようなことの原因としては、…」は記載のとおりだと思います。また、当社HPのリンク貼りは問題ありませんので、ぜひお願いします。---------------------------------------------------------------------------また客観的な視点:岡山県工業技術センターによる粒度の調査が行われています。「吉備胡粉」のみならず、工業製品として生産されるということは、これ(牡蠣殻から作った粉体)を原料として今日的な商品がいろいろと製品化されているということも想像できると思います。ただし、このあたりについては、企業間の関係性もあって公開出来ないものもあるようです(^^;私も思い当たるあれとかこれとか・・・聞いてみると・・・モゴモゴでした^^;。少しだけですが、山陽クレーさんのホームページに記載があります。案外、すでに身近な存在かもしれません)
張り子、人形制作などの下地材としてなどはわかりやすい使用例です。ネール材料、薬、接着剤、ゴム関係、もちろん絵の具製造にも。
岡山県新見の伝統的和紙 神代和紙を使ったワークショップ「新見美術館 神代和紙に万葉を描く 10月11日(日)13:30より 要予約」(「現代日本画家が描く万葉のこころ」展付帯 9月19日から11月23日まで)のために作っている紙素材。神代和紙に吉備胡粉に染料や他の絵の具を混ぜ具絵の具として塗っています。これを短冊に張り込んで(私が準備!!)支持体とし、参加者にその上に絵を描いていただくワークショップです。吉備胡粉を持参予定です。■私個人としては、まず材料の選択肢が増えることの嬉しさを思っています。次に工業製品として、粒子の大きさ、品質を感覚だけではなく再現可能なものとしてユーザー大勢で捉えられるのは意味があることだと思います。また、コストも関係します。使い方はユーザーが工夫するのです。 ■次に色のこと。微妙な違いではあってもそこにこだわって描くのが絵描きであると思っています。私にとって、白さの違いは大きな違いです。この部分については譲れないと思います。(山陽クレーさんからの回答から推察するに、原材料選別確保を変えるとなると製造コストも当然上がるでしょうし、だからこそ工業製品かもしれません)だからといって使えないかといえばそうではありません。山陽クレーさんと変わらない色合いの胡粉はすでにあるように思います。(かつて生徒の使う胡粉にこれ以下の市販品もありました)■材料素材としての胡粉の違いはさておき、狩野派の団子を作る溶き方他、膠の違い、使用技術の違いも無視出来ません。素晴らしいと感じるからこそ、このあたり、もう少し科学的に考えられたら、取り組めたらと思っています。■経年変化について 生まれたばかりの存在です。素材としての科学的な検証はあるにしろ、今後、使って試していければと思います。 和紙、絹、絵の具、膠などの製造における原材料確保・製造、続いて筆、刷毛などの道具も、それを使用する人の価値観によって左右されるように思います。継続、残って欲しいと思うからこそ、情報共有したいと思っています。いくらかでもお役にたてていれば幸いです。
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和紙など多くの伝統的な存在が、使用者の減少や製造現場の後継者不足などで、継続、存続が難しくなって来ている今日です。ギリギリの状況と言っても良いでしょう。また時代の変化の中、それぞれ経済的な問題等、昔からのままではいられないということもあります。
日本画材料において、旧来の日本画絵の具製造からではなく、別分野から登場した「吉備胡粉」の存在は、大変興味深いものです。また原材料として瀬戸内産の牡蠣殻を使っているのも嬉しいことです。
もちろん、是非とも伝統的なものには継続・残って欲しい!!です。
こんな時代に新たな選択肢が生まれたことが嬉しいのです。