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10/3//2020  材料技法

吉備胡粉 岡山発の絵の具 その3

■ 吉備胡粉レポート その3です。

岡山県工業技術センター
素材開発部 機能材料科 専門研究員
藤井 英司 さんから情報をいただきました。
 
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上記画像は、私が使用している乳鉢、胡粉です。胡粉は、若い頃よりずっと上羽絵惣株式会社の白鳳を使用しています。手触り、団子を作る時の触感などもありますが、なんといってもその表現できる白さで選んだように思います。
 
胡粉の溶き方、使用方法によって実現できる白さ(見え方)は変わるように感じます。しかし、そこには絵の中で使われた場合、その使われる場所(周りの色)、支持体表面の様子が影響することは容易に理解してくださることと思います。
 
客観的に色(ここではその白さ)を比較する。

手法、技術がありそうには思っていましたが、照度や測定機械、技術についてかなりの精度(白さの違いを測ること)なかなかやってみようとは思いませんでした。

 
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先日紹介した 初レポート記事 
吉備胡粉 岡山発の絵の具 9/20//2020  材料技法
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2020/092001/index.html

上記で最後にアップしている画像、「実際に使用したテスト結果物です。」を
岡山県工業技術センター 藤井 英司さんにお送りしましたところ、ご厚意でセンターの色の専門家(松本様@食品繊維科)にお願いし、色を数値化してくださいました。
測定装置HPは以下とのことです。
https://www.konicaminolta.jp/instruments/support/discontinued_products/cm3600d/index.html
★上記はコニカミノルタ様のホームページへリンクされています

また色の数値化に関する参考ページもお教えいただきました。
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section2/02.html
★上記はコニカミノルタ様のホームページへリンクされています。

明度で捉えるとやはり白鳳が白いということになるのでしょう。ただし、赤み?のみで言えばまた違った結果になりそうです。参考になれば幸いです。

 
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実は、この機会にと、別の試料も一緒に藤井さんに送っていました。
吉備胡粉3種類については、その平均粒度を計測済みです。では、私が普段使用している乳鉢で擦ったものはどの程度の粒度なのかが気になりました。感覚的には吉備胡粉No100程度と思っていました。しかしあくまで感覚的なものです。そこで急遽、現在乳鉢に残っている乳鉢側面の胡粉を一緒に送ることにしたのです。最初の画像、No.1は大きい乳鉢No.2はそのとなりの乳鉢です。ちなみに大きい乳鉢の直径(内径)は約20cmあります。(測定してくださるとは思っていませんでしたので側面から削ぎ落とす形で試料としました・・・実使用状態と少し違う・・すこし残念です)。ちなみに同じ白鳳を2種類としたのは乳鉢の大きさによる擦る折の力の入り具合の違いも確認できたらと思ったからです。もちろん大きいほうが力を入れやすく感じます。

以下、藤井さんからの情報です。
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ホタテ粉末(No.1とNo.2)の粒度測定と比表面積を行いましたので、結果をお知らせします。

比表面積は
No.1:4.74m^2/g
No.2:4.50m^2/g
でした。

粒度分布測定の結果はファイルを添付します。
メジアン径で比較するのが良いかと思います。思っていたより大きかったです。
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上記は、藤井さんがお送りくださった粒度測定結果の一部です。この画像下にはより詳細なデータがあります。画像はNo.1の試料によるもので、もちろんNo.2についても同様のテストを行ってくださいました。(感謝!!!です。)

ここからは、私個人がこれら得られたデータからの推測です。

1)No.1とNo.2の比較において、大きい乳鉢と小さい乳鉢による力のかかり具合によって出来る粒度、細かさの違いはそれほど無いことがわかったように思います。

データ的には、No.2の方が平均粒度が若干小さいようですが、これは擦りおろした残りが乳鉢中に大きい乳鉢より多くあったことも影響しているのではないかと推測しています。

胡粉を団子にするおり、舞い上がる胡粉の様子から私が感覚的にベビーパウダー程度と思っていた通常使用の粒度について、あくまで舞い上がっていたのは一部であり、その中心(平均粒度)は、(吉備胡粉100に比べて)大きかったことがわかったように思います。

また工業的に作られるからこそ、より均質な平均粒度が保持されており、今回、それぞれ明らかに触感として違いを感じられたのではないかと推測しました。大変ありがたい機会をいただいたと感じています。
 


これらのことから、通常使用している絵の具の粒度に関することについて、例えば、天然緑青の白にも「淡口」などあり、通常の白との違いには、原石色の違いだけでは無い粒子の大きさの違いも使い勝手に大きく影響していそうです。また松煙墨と油煙墨の違いについて、感覚的に一般的な油煙墨に比べ、よいと言われる松煙墨には多様な粒子径が含まれていると感じていましたが、良い墨というものを作る場合、どのような粒度をどのバランスでブレンドするかがノウハウとして大きいと思われす。もちろん使用する膠の性質もありますし、団子にする、練る段階も重要となるに違いありません。

当然ながら、胡粉を混ぜ具墨、もしくは染料によって具絵の具にする場合などでも粒度を意識することで何らかの違いを実感できるように思いました。

科学的な視点が入ることで、感覚的に伝えていたことに具体性をもたせることが出来ます。たとえば、工業製品として作られる「吉備胡粉」だからこそ、平均粒度をもとにしたブレンドによる使いやすい安定(ユーザーが乳鉢を用いないで使う)な「胡粉」も作れそうです。

学生がテスト使用を始めました。
吉備胡粉200(一番細かい平均粒度)の有用性を確認出来る使用方法も見つけたようです^^;。このあたりについてはまた紹介したいと思います。

岡山県工業技術センター 藤井様 松本様 ありがとうございました。