National(Matsusita) RJX-1011
松下電器産業(現Panasonic)が発売した、最高級HFトランシーバです
電源内蔵の一体モデルで 420 x 172 x 340mm 23Kg と、大型です
USでは、アンテナ・メーカーとして高名なHy-Gainブランドで売られていました(HyGain3750)
Nationalブランドでは、USに輸出したくてもできない事情でした(先輩Nationalブランドあり)
確か1975年の発売で、当時は¥430,000の標準販売価格がついていました
おなじみのところで TRIO TS-520・TS-900、YAESU FT-101E あたりとほぼ同世代です
ディジタル表示を採用ということでは、NEC CQ-110 YAESU FT-501あたりと同じ時代です
本機と同じデザインで、50MHz帯オールモード・トランシーバ RJX-661が販売されました
そののち、RJX−810という普及機が登場しました、1982年です
こちらは、WARCバンドに対応し、オール・ソリッド・ステートです

160mバンドから10mバンドまでをカバーし、JJY/10MHz帯の受信が可能です(WARC未対応)
受信機の構成は、ダブル・スーパー・ヘテロダイン方式です
1st−IFは、9MHz ここには、8ポール・クリスタル・フィルタ(2.4KHz −6db 4.0KHz −66db)が入り、そのあと50KHzに変換され、CWではここで集中IFTによる狭帯域処理されます(CW:400Hz −6db 1.8KHz −66db)
送信は、ドライバ6GK6 ファイナルS2002x2 そのほかは半導体で構成されています
RF〜Mix部については、当時最新技術であったデュアルゲートMOS FETが採用されています
回路図ほか資料が全く無いため、正直なところ良くはわかりませんが、国内で50KHzIFを採用したアナログ方式の本格的なトランシーバは他に見ないと思います
この点以外、特別興味深い回路設計ではないように思われますが、使用されている部品は良いものが採用されています

この製品の一番の問題かなと思えるのは、使用されている隙間テープ?・・・・結果として、このものが湿気を吸って自身はおろか周囲を腐食させてしまう、これは良いと思って採用したものの思わぬトラブルメーカーになった、採用ミスかと思われます
写真は、その朽ちた隙間テープ?を剥した跡です
回りはすっかり白く錆が浮いています
幸いにも、近くのSWなどには影響は出ていませんでした
  入手した時点で、電源SWを入れるとヒューズが飛ぶ、電源が入らないという状況でした
その原因は、この整流ユニットにある高圧整流ダイオード2本のショートにありました
点検の結果、ほかに問題は見当たらなかったので、ダイオード交換後、そのまま通電しました
無事通電できました
受信はできましたが、送信できません
まず気づいたのが、ドライバ管に+Bを給電するRFCが黒焦げでした
これは、今風の2mHのRFCに交換することでPassしました
下段のCパンクも含め、また中和も大きく崩れていたこと(PAチューンの状況によっては発振していた)等から、PAの発振に起因してこれらトラブルが起きたのかなぁと想像します
  160/40/10mバンドが送信できない・・・正確にはパワーが出ない!です
80/20/15mバンドは、問題なく100W程度の出力が出ています
RF基板をシールドを外してチェックすると、C37と思われるマイカ・コンデンサがパンクしていました(基板が黒く焼けていて、判読しづらいのですが、たぶんC37だと・・・)
左の白いペーパーの上に、その破損したコンデンサの破片を載せています
回路図がないので、本当にこれが犯人かどうかはわかりませんが、きっとそうであろうと・・・しました!
C37と思われるコンデンサ
その大きさなどから100〜300pF程度の容量と想像されます
取付位置、あるいはその容量から、少なくても10mバンド用の同調Cではありません
カット・アンド・トライでやってみようと、RFユニットの分解を試みましたが、半田付けを外さないと目的の場所までたどり着けないことがわかりましたので、ここで諦めました
左写真は、諦めた時点でのスナップで、右サイドから分解中のRFユニットを写したもの、右のシールドは終段部です
VCは、RFチューン用で、送信ドライブ、受信RFアンプの同調をとるものです
トップミクサ(アッテネータON)で受信するときには影響しません
本体上側ケースを外して上から写したものです
シールドケースの下は、電源部とファイナル部です
フロントパネルにつながるプレートVCとロードVCの軸は外しています
シールドケースに収まったデジタル表示部を持ち上げて、その下を写したものです
中央右寄りにドライバ管の頭が見えます
その右のボードは、RFユニット
この部分はユニット化されていて、同調VCは下側にあります(シールド板を取り外して写しています)
左には、9MHz8ポール・クリスタル・フィルタが見えます(9MHz-IFユニット)
下に見えるシールドされた箱は、VFO部です
上カバーを外し、後ろ側のシールド板を外して写しています
ディジタル表示ユニットを持ち上げています
その下に見えるのは9MHz-IFユニットです
手前のシールドされた部分は、RFユニットです
電源トランスは大きく、余裕を感じます
ディジタル表示ユニットを定位置に固定することで、ドライバ管の頭を押さえる構造になっています
ファイナル管も、ふたつのプレート間をエポキシ板と思われる素材で固定してあります
上面奥シールドカバーを外した状態です
ファイナル管のプレート間が固定してあること以外、一般的な景色です
この写真では分かりませんが、ファイナル管の下側のシールド板には穴が多数開けられていて、ドライバ管の放熱・・・空冷ファンによる空気の流れがドライバ管をも巻き込むように設計されています(終段部シールド板の他部分は、密閉されるような構造です)
下カバーを外した状態です
下がフロントパネル側です
右側にみえるシールド部は、PLLユニット
その下に並んで見える白の物体はIFT・・・50KHzのIFTユニットです
左上は、ファイナル部 シールドの中身はLPFです
スピーカーは、しっかり固定されています
スピーカー右のシールドの中身は、キャリアOSCユニットです
上段と同じシャーシ底側の様子ですが、シールドケースと内臓スピーカーを除けた状態の写真です

右上がPLL部で、今回JJW/WWV(10MHz帯)のLockが外れていましたので調整を行いました
シャーシ下 右下部です

50KHz IFユニットのアップです
IFTが6つ並んでいるのは、CW用集中IFフィルタ
横に並んいる合計9個のIFTがCW受信に関係しています
テクニカルガイドにある回路図で確認しました
シャーシ下 左上です

左上シールドで囲まれた部分は、ファイナル部シャーシ下です
その右下に、ドライバ管のソケットが見えます
その左が、送信RF部(ドライバの前段)
 シャーシ下 送信RF部のアップです

LPF部も、シールドを取り外して写しました
本格的なLPFを内蔵、です
こちらは、フロントパネルを取り外したフロントシャーシ
故障品は、叩けば治る??? 
よく言われることですが、意外と当たっています
今回、最後の修理テーマは、感度が悪い!でした
原因がわからず、ドライバーの柄でもってファイナル・シールド・ケースを一撃すると、あららガッツリ感度が上昇
ただ継続性がありません
原因を追いかけると、ファイナル・ユニットに内蔵されてるリレーの接触不良でした

本機の受信アッテネータは、一般的な抵抗器による減衰ではありません
アッテネータONで、トップミキサでの動作  アッテネータOFFで、RFAmpが働く・・・です
14.2MHzにて、S/N10dbが得られる入力は、
アッテネータ ON時、すなわちトップミキサの状態で  1.3μV
アッテネータ OFF時、すなわちRFAmpが働いた状態で  0.17μV
実際に耳で聞くと、SWのON/OFFで、ノイズ・フローにはほとんど変化なく、感度だけが変化する感じです(いい感じです)
カタログデータは、0.25μV以下、です
 

機能ほか
ノッチフィルタ、ノイズブランカ いずれもよく効きます

トップミキサ+RFアンプという設計は、当時とすればちょっと興味深いです
それをアッテネータON/OFFで現わしているところも面白い点です
受信に関しては、全体的に静かで、落ち着いた使用感が得られます

デジタル周波数表示のひとつにメモ機能があります
フロントパネル表示で点灯していない右側に、覚えておきたい周波数をメモ・表示させることが来ます(単純にその周波数を記憶表示するだけ)

メインダイヤルは、1回転20KHzで、ダイヤルタッチは悪くありません
が、ダイヤル・ノブはプラスチック製・・・このクラスのダイヤル・ノブにしてはチープです
  

入手した本機は、保存状態も良くなく、外観も傷まみれで、見栄えそのものは良くありません
が、内部の状態はそんなに悪くなく、一部送信はできない(パワーが出ない!)にしても、十分当時の雰囲気を再現できることができたように思います
なにせ40数年という時間が経過しています
ちょうど作業テーブルの下にTS-950SDXが置いてあったので、こちらの感度も同じ条件で測ってみました
こちらは、1992年発売のDSP搭載モデルです
結果は、0.15μV入力で、S/N10dbでした(14.2MHz)
アナログ設計のRJX−1011の感度もほぼ同じという結果です(感度だけに限れば、17年という時間をかけての進化は、ほとんど無いということですね)
2019.10   JA4FUQ

 テクニカルガイドを入手
とあるご縁から、テクニカルガイドが手に入りました(部外秘:昭和50年7月との記載があります、1975年です)
損傷したコンデンサは、330pFで、ドライバ段プレート同調コイル・コールド側の同調コンデンサ(中和ブリッジ構成C)と分かりました 
先に見つけた、RFCの損傷と同じタイミングで起きた損傷と思われます
その破損の原因は、終段の発振か無負荷での送信と考えられます
基板の上側から330pFのコンデンサを追加しましたが、28MHz帯で同調が取れ、送信パワーが出るようになっただけで、相変わらず1.8MHz帯/7MHz帯のパワーは出ません
調べると、パワーの出ないバンドのプレート同調コイルに電圧がかかっていません
プリント基板の損傷/パターン切れの公算が大です
 先回(初回)諦めた、RFユニットの取り外しにかかりました
RFユニットの取り出しはかなり難しい、最初の時点では取り出しを諦めました!が、今回は本気で取り組みました
取り出しには、半田付けも2本外す必要があります
写真は、取り外して左に90度回転させた状態です

RF基板上面
破損したコンデンサを交換した青いコンデンサが見えます
耐圧2KV・・・手元にあったものを使いました(耐圧は、500Vで十分)
RFユニットの下側(裏側)
BAND-SWの下に目的とするRFコイルの並んだ基板があります
高周波を扱いますから、当然配線は最短で・・・
どうやって目的を果たそうか悩みます
まさか、BAND-SWの取り外しは無い!
RFユニットを取り外しただけでは目的の基板のパターン面の確認ができません
写真のように同調VCを取り外して配線を残して回転させ(起こして)、下に隙間を作ればなんとかなりそうです
この場合、VCのアース線1本を取り外す必要があります
こうすることで、やっと基板裏の目視確認と半田ごてを入れるスペースができます
ここでは、テクニカルガイドにある基板透視図が役立ちます
なにせ横から覗く格好ですから、きちんと目視確認することが出来ません
パターン切れを確認…横着して(できる対応ということで)錫メッキ線を使ってリカバーしました
以上の対応で、全バンド既定の送信出力を得られるようになりました 
  
気になっていた、細かい調整をテクニカルガイドに沿って行いました 
ここまでの保管環境が良くなかった分、見た目はあまり良くない状態ですが、電気的にはほぼカタログ値をクリアさせることが出来ました
十分実用に供します

純正外部スピーカー RJX-S1011 の内部を後ろから  あまり目にする機会がないでしょう!?
ケースの上下(ケースの肉厚の薄い側)には、結構分厚いフェルトが貼ってあります

折角ですので、TOP写真は並べて写したものに入れ替えます
本体の高さがありますから、横に並べたほうが全体の格好がよく見えます
2020.10  JA4FUQ 

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