STAR SR200
今は亡きSTAR社の、ほとんど最後の製品になったと思われる受信機です
本当の最後は、このペアとなるはずだったST200だと思いますが、ついに実物を入手しました
YAESU FR-50 + FL-50 このペアと、商品的にはほぼ同じ位置付けです

 相方のST200と、外部VFO FV-50と一緒に

確か1967年か68年の発売だったと思います(STARアマチュア無線部門は、1969年に八重洲無線に合併吸収されました)
現金価格¥21,800と当時のパンフレットに記載があります〈月賦価格¥22,500とも)
3.5〜21MHz帯を0〜500KHzの範囲、28.0〜30.0MHzをダイヤルいっぱいに展開する方法で、当時のいわば標準品であった9R59や59Dのような、メインダイヤル プラス スプレッドダイヤルというダイヤル構成ではありません
このことは、先行して発売されていたSR-500X(キット)/SR-550でも同じです
SR-550の¥39,000という価格に対しての弟分、それもちょっと垢抜けした、という設定のようです
オプションで、1.8MHz帯とJJY受信用に5MHzと10MHzの追加コイルがありました
3.5MHzマーカー・クリスタルを標準で装備、発振はシリコントランジスタの採用です
同じくAGCにも増幅型ということでシリコントランジスタが採用されています
そのほかは真空管による、高一中二、IF:1650KHzのシングルコンバージョンタイプの受信機です
基本構成は、SR-500X(キット)と同様です
8球、2トランジスタ、2ダイオードという構成です
IFフィルタは、1650KHzクリスタル一片による簡易なものですが、それなりに機能します
ハリクラフターズ SX-140をモデルにしたのではないかと想像します
後から設計されただけあって、SSB/CW受信には、プロダクト検波が採用されていますし、一部にはシリコントランジスタも採用されています
デザインも、当時としては非常に垢抜けしています
STAR社が八重洲無線に吸収される直前の製品であり、また用意された送信機もトランシーブ操作のできないクリスタル式(VXO方式)ということもあって、多くは市場に出ていないと思われます
市場に多く出回ったのは、八重洲無線FR-50/FL-50のセットでしょう
おぼろげながら、当時の八重洲無線の広告に、このSR200/ST200の掲載があったのを見たような記憶があります

いつも通り、清掃をしたのちメンテナンスに取り掛かります
フロント・パネルも外してお掃除です

SW/VRなど一通り清掃し、メカ部に必要なところはシリコングリスを塗布
思わぬトラブルに遭遇
IFの調整中、1片のクリスタルフィルタが採用されているのですが、本来帯域幅を調整するトリマが、締め付けるほど(容量が増すほど)感度が上がるという事象に遭遇
これは変だ!
その原因は、1650KHzの水晶片
写真上側の足につながる金属板のリードが折れて断線していたものを半田付けしました
ディップメータで発振テストをして、発振しないことから分解することとなりました


FT-243型クリスタルの分解写真です
下段中央の半透明に見えるものが水晶片です
ボディにはこれらを両面から挟むようになった金属面があり、これが足につながっています
そうです、「C」結合です
この足につながる金属面の片方が折れて断となっていました
折れていた部分を半田付けし、再組立てしてディップメータで発振を確認して元のソケットに戻しました(組付けにコツがあることがわかりました)
   
ブロックコンデンサ
容量計で測ると正常値を指示しますが、ご覧のように電解液が漏れています

交換です


ブロックコンデンサを交換しています
黒いものが新たに取り付けたブロックコンデンサです


シャーシ下側

RFチューンの3連VC
真ん中のステーターはアースされています
(実際に使ってあるのは前後のステータ)
きっと発振防止策のひとつです
当初、この同調をとることで受信周波数が微妙に変化することに、ここで発振でも起こしているのかと思いました


以下は、電気的に問題を感じた部分です
ここは改造としましたが、大きな改造点はありません
言い方を変えますと、ちょっと手を入れるだけで大きく改善がみられるということです
オプションのスタビロが組み込まれていました
が、給電電圧が120V足らずで105Vの定電圧化にはちょっと無理があるようで、具体的には信号強度が変わるとオシレータ&BFO周波数がドリフトします
RFチューンをとると、周波数が変化します
信号強度が増してAGCがかかると、B電圧が上がる・・・結果ドリフトが生じる、です
これではSSB/CWの受信に、プロダクト検波を用意しても意味がありません
左図のようにスタビロにかかる電圧を高くかけるように変更して安定化を図りました
 
SSBの受信音が良くありません
具体的には、クリッピング歪みが多いというか、とても気になります
その原因は、AM検波用の6AL5です
プロダクト検波へのIFからの入力を、IFTの二次側ではなく一次側に変更し、結合を疎にしました
これで、いわゆる良い音でSSB受信ができるようになりました(AM受信に比べ、多少音量は下がります)
   AFボリュームを最低に・・・反時計回りに回し切るたびに、カツッという不快な音がします
回路図を見ると、6BM8 三極部のGが直接VRのスライダーに接続されていましたので、0.1μのコンデンサを直列に入れ直流分をカットしました
部品がケチってあった、ということです
これで静かになります


 以下、写真集です
特徴的なダイヤル機構
VCが上向きに取り付けられています

中央に見えるクリスタルが、この受信機のIF帯域幅を決める1片式のクリスタルフィルタ/1650KHzの水晶片です
今回は、SSB用に調整しましたが、山が2つできてしまい、AM用には別の調整点がありそうです
T2の調整をもっとしなくては・・・で、終わっています


 
下手前に頭が見えているのは、マーカー用3.5MHzの水晶片

ブロックコンデンサのひとつは入れ替えた現状です
 
こちらはオリジナル(ブロック・コンデンサ交換前)

掃除したら意外ときれいになりました
入手した時点では、シャーシ全体に数ミリものホコリが積もっていました
湿気が少ない状態で保管してあったのが幸いでした
 
背面パネル

M−Rは、今回新たに取り付けたものです
オリジナルでは、アンテナ接続は端子板です
端子板
1.ミュート/スタンバイ
2.スピーカー接続
3.アンテナ接続
真ん中、黒く見える穴はSメータゼロ点調整VR
ヒューズ・ホルダは、シャーシ上面に

すごく薄汚れていたものが、嘘のようにきれいになりました
こんなこともあるのか・・・と
全体的にB電圧が低い印象を受けます
取説への落書きにもありますが、規定値より低めの電圧です
が、真空管は長持ちするだろうと無視ですHi

7MHz帯 S/N10dBを得るのに
      SSB/CW 0.4μV入力(キャリアのON/OFF)
      AM 1KHz30%変調 2μV(変調のON/OFF)
とスペック同等以上の結果でした
2019.05 => 2023.08追記   JA4FUQ

無線機歴史博物館に 戻る


週間クールサイトに選ばれました
無線LAN専門サイト
青電舎:担当 堀
   Mailは seiden_atmark_po.harenet.ne.jp (お手数ですが、_atmark_を @ に直して下さい)
      お電話では、(086)275−5000 
      FAXは、0120−545000
      〒703−8207 岡山県岡山市中区祇園433−6