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3.5〜50Mhz帯をカバーするアマチュア無線専用受信機です
この後、ケースを再塗装…現在はブラックです! |
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1961年の発売 東京オリンピックの3年前です(昭和36年)
TRIO(現JVCケンウッド)より発売された、かの高名な?9R-59の登場は1960年、こちらもプロダクト検波は採用されておりません
60年代前半は、まだまだSSBは特殊というか、ほとんどのハムは手にすることの無かった電波形式でした(私の体験では、SSBの普及は1668年くらいから)
さて本機ですが、わずか5球で構成された、高一中一のシングルスーパー方式を採用した受信機です
IFが1650KHzという、ハリクラフターズお得意の周波数構成が採用されています
この時代には、よく見られた方式です 高級機では、IF:1650KHzから、もう一段455KHzとか50KHz台に落として選択度を稼ぐ、国産ならSR−700などが、この方式を模したものです
一方では、BCラジオを親受信機にして、短波を聞く・・・DELICA プラグ・イン・コンバータでも、1500KHzに出力する方式が採用されていました
さて、本題に戻って、ノービス・クラスには、HFのPhone(SSB)の許可はなく、SSB受信は補助的であったと思われます
本機の特徴になると思いますが、IF増幅管のサプレッサ・グリッドを浮かして発振させることでBFOの代わりをさせています
言わば再生方式を採用、です
この再生状態の変化により、帯域幅の調整・・・マニュアルによると8KHzから2KHzの間で可変が出来るとあります
確かに選択度の変化は認められますが、利得の変化も大きく使い勝手が良いかどうかは微妙です
CW/SSB受信時には、ほぼ時計方向に回しきった位置で、多少BFO周波数の変化が可能です
実際の受信に於いては、信号が強いとビートがかからず、AFゲインを高く固定して、RFゲインを絞ってちゃんと復調するよう調整する、こんな操作になります
それなりな音質で受信することが出来ます
帯域幅が広いため、例えば7MHz帯などに於いては、混信が多いというか、SSBで言えば、復調できない信号が同時に聞こえるというような感じになります
最後は自分の耳で選択して聞く・・・原始的?な受信方式ではありますが、必要かつ十分な感度が得られていることには正直驚きます(下段表参照) |
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こちらが特徴的なBFO回路です
AM受信時には、帯域幅の調整が出来るとあります(8〜2KHz)
再生受信に近い感じで、発振手前が一番感度も上がり、選択度も向上します
BFOは、この発振状態を利用、です
この回路が、実際どんなものか使ってみたいという興味が、この受信機を手に入れた理由のひとつです
CW/SSB受信時には、AGCはOFFとなり、T2 IFT のAは、47KΩの固定抵抗で接地されるようになっています
CR1は、シリコンダイオードで、R17で電圧を上げていけば、あるところから電流が流れ、導通することになります
ここでBFOとして動作することになります
強い信号に対してはビートがかからないため、実際の受信に於いては、AFゲインを(ほぼ)一杯上げて、RFゲインを調整して受信するという形を取ります
当然Sメーターは、役に立ちません!
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同調調整は、ANT−TRIMだけ、回路も運用も極めてシンプルに考えられています
RF/6AZ8==OSC・MIX/6U8A==IF/6BA6==AVC・DET・1stAF/6T8A==メーターAmp・AF/6AW8A 以上の、わずか5球の構成です(1/2 6AZ8は、キャリブレータ発振用)
それでいて必要な感度などきちんと得られる・・・人間の耳をアテにはしていますが(当然ですが!)、ある意味非常に良くできた受信機と思われます
21MHz帯以上のバンドは、局発の2倍高調波を利用してあり、CWのビートがある程度濁るのは致し方ないかと思います
14MHz帯以下のバンドでは、SSBを受信しても周波数安定度に大きな不安は感じません
糸掛けダイヤル方式のバンド展開ですが、チューニングにも不安はありません |
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劣化していたコンデンサ類・・・電解/チューブラ(オイル?ペーパー?)コンデンサは、その程度によらず全て交換しました
8〜40μFの電解コンデンサは、全て手持ちの47μFに
AF段カソードに入っている50V10μFは、手持ちの160V10μFに交換
0.1μFは、やはり手持ちの400V耐圧メタライズド・フィルム・コンデンサに交換しました(この写真に写っていないものが、あと1個あります) |
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シャーシ上面
FT243空きソケットは、マーカー用のものです
3500KHzのクリスタルが入手できれば、差して使おうと思っています
極めてシンプルなシャーシ上のレイアウトです
中央下からアンテナ入力、反時計回りに信号が流れて左下で、オーディオ出力です
これまた無駄のない流れです |
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シャーシ底面
電解コンデンサ、チューブラ(オイル?ペーパー?)コンデンサは交換済みです
バンド切替SW(3段)
一番上のコイル群がOSC
6バンド分あります
中央の部分が、RF出力・・・個別に調整できるのは、21Mhz帯から上の3バンドのみ
一番下は、アンテナ入力コイル群で、同調はフロントパネルにあるANT−TRIMで行います |
選択を含む聞き取りは自分の耳次第、単に聞こえるかどうかということでの計測値をご紹介します
RF1段、IF1段 プロダクト検波なし!・・・SSB/CWは、RFゲインVRから手を離せないようなスタイルでの受信ですが、聞こえるか聞こえないかという点では、非常に高い感度が得られています |
BAND(MHz) |
AM
30% 1KHz 変調ON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度 |
ビート受信(CW/SSB)
RF信号のON/OFFで S/N10dbが得られる信号強度 |
3.5 |
2.5μV |
0.8μV |
7 |
1.5μV |
0.3μV |
14 |
0.5μV |
0.2μV |
21 |
0.6μV |
0.2μV |
28 |
0.7μV |
0.2μV |
50 |
1.3μV |
0.5μV |
14MHz帯AM受信事例
再生(帯域調)VRで、発振寸前(狭帯域)状態 0.5μV
再生(帯域調整)VR反時計方向いっぱい(広帯域)状態 0.7μV
3.5〜14MHz帯に於いては、RF増幅プレート側同調コイルは固定です
21〜50MHz帯については、ちゃんと調整できるコイルが単独で採用されています
この差が影響していそうな結果ですが、ローバンド対策で敢えてこうしてあるのかも知れません |
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いろんな面で、なかなか興味深い受信機です
また、受信機の基本を教わるようなところがあります
高一中一構成の利得で、十分実用的な感度が得られる
現在の最新式の受信機と、この60年近く前の受信機で、言うほどの根本的な差異はないと言えます
如何に楽に受信できるかと言うところに、手間(コスト)をかけているんだということを改めて思わされます
この先ですが、DELICA プラグ・イン・コンバータの親機に、IF:1650に直接、あるいはMix入力部に接続出来るよう、一部工夫をしてみようかと思っています(150KHzの差は、DELICA側で対応)
また、フロント・パネルと内部シャーシは非常に綺麗なのですが、ケースがみすぼらしいので(傷だらけ)、ブラックに再塗装してみました |