成羽美術館でギャラリートーク
※話の要約1、日本画と言う言葉の来歴と、言葉が出来た当時のこの国の様子、背景の紹介。2、描くのに使われている材料は、古くは西洋でも同じように使われていたこと。だから材料そのものの違いで、日本画、洋画などと簡単には分けられないという話。3、水墨画を題材に、その表現に使われている「水」の働き、「墨」を手がかりに、墨の良し悪しとその製法の関係や、記録する道具としてのそれらの成立についての話。4、天然の鉱物から作られた絵具は、酸化させる事で色が変えられる。5、昭和とそれ以前の価値観の違いはどんなところから生まれたのか。6、線を描いたり塗ったり、「筆」を使う事によって、普遍的な「時間」の感覚を共有する話。そしてそれが、この水と自然に恵まれたこの国の価値観、もし「日本画」というものがあるならそこには、この価値観が無いはずはないという話。7、人物画の歴史的変遷と、近代というものがもたらした個人という概念と絵画について。時代の変化によってテーマ、表現、技法の変化もたしかにあったが、もともと工芸的な要素と密接であった日本的表現の一つは、美人画における美しい着物を描くという姿で近い時代まで残っていたのでは無いか?という話。8、運筆、描き方を知る事でものの見方も手に入れる。9、水を使った具体的表現、テクニックの紹介。10、金箔の上に描かれたライオン。その作業工程、作画を、絵に残された情報をもとに順を追って見てみる。11、明治の漆工芸と日本画家たちの関係、国の競争力、輸出品としての図案。12、「雪月花」など画題の選ばれ方とこの国の美意識。多くの人との共感のために画題は選ばれた。13、日本人が描いた油絵、その筆の痕跡に作家たちが過ごしたこの国、時代、毛筆の存在とその記憶、油絵の筆に置き換えてなお残る何かを感じることがあるのでは?。http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/topcontents/news/2009/091501/index.html午前と午後で、それぞれで少しずつ異なった内容となりました。過不足はあるにしろ、ほぼこのような内容をお話したつもりです。絵の前で、それぞれに使われている部分を指摘しながら、絵具、筆の使い方など具体的なテクニックなどとともに紹介しました。このほか、作家本人を知っている場合等はエピソードとなる話も加えながらとなりましたが、こうして書き出してみると、約1時間という時間がはたして長かったか短かったか?。今回の拙い話が、いくらかでも日本美術、この国の価値観について興味を持っていただける機会となっていれば幸いです。
さて、上の方に一枚の画像がアップしてあります。これは今回の個展に出品する「松」を描く時に貼った金箔の準備の様子です。何故、こんな画像を上げたかと言うと、実はギャラリートークにおいでいただいたお客様の中にその筋の?すご〜い専門家がいらしたのです。トーク終了後、学芸員の方とご一緒して、トークでもふれた竹内栖鳳の金屏風に使われている金箔の大きさから分かる事などをお教えいただき、流石餅は餅屋!と感心するばかりでした。また箔の製造現場、箔打ちの現状、それに関係する和紙の事なども話題となりました。明治と言う時代と、箔打ち機の導入。薄く打つ技術が打つ時に用いられる重要な挟む紙(加工された紙)、その原料、和紙素材と密接な関係があり、このあたりも大変厳しい状況らしい事など。また、最新の研究について。いろいろな話が次から次にと続き、気づけば閉館時間。暗くなってお開きとなりました。お話しくださった専門家!、お名前を紹介したり、もっと違った情報も今後紹介出来ればよいな〜と思っているところです。こうした機会、出会いに感謝するばかり。
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楽しむ為の手がかりとして具体的な材料や技術について紹介しました。実物を目の前にしてのそれは、こうしたネット上の情報では得られない実感があったのではと思っています。