小野竹喬のふるさと
日本画家小野竹喬のふるさと笠岡は、岡山県の最西部、瀬戸内海に面した県境の街です。文章担当の紀田順一郎さん、そして今回は久々に山陽新聞社の担当、江見文化部長とご一緒しての訪問となりました。昨年暮れの大阪市立美術館を皮切りに、年が明けて正月3日よりの笠岡市立竹喬美術館、そして東京国立近代美術館でと順次開催された生誕120年小野竹喬展は、記憶に新しいところですが、その展覧会出品作でもある代表作「島 二作」のスケッチ場所ほか、今回は、竹喬の描いた絵や残された当時の資料を手がかりにして現地を訪ねる企画としたのです。 今回、私がメインの絵として選んだのは竹喬の通った小学校の門です。笠岡市街地に入って先ず目につく立派な門構え、陣屋門の姿でした。門脇にある堀では菖蒲の花が一輪咲いており、強い日差しに亀が甲羅干しをするそんな当日、いつもは外から眺めるだけだった学校の中にも入らせていただき、竹喬ゆかりの品なども拝見する事が出来ました。
次に向かったのは神島でした。「島二作」の取材地を求めて橋を渡り、道路を進みます。途中道に迷いながらも目的地そばまでたどり着き、あとは車を降りて徒歩での散策となりました。しばらく山道を進み、寺の脇を通ってやっとスケッチ場所らしきところにたどり着きました。風景の中に絵で見覚えのある形を探します。たしかに、ここから取材したにちがいありません。そして竹喬の創作、描いたおりの工夫といったことも見えてきます。
この遍路道、きっと竹喬は歩いたに違いありません。昨日まであったものがふと気づくと無くなっているような現在の街の姿を思うとき、90年以上前に竹喬が描いた「島 二作」の姿、その取材した場所がほぼ変わらないで今も残されていると思うと、なんだか不思議な気持ちになってきます。確かに樹木は大きくなり、その姿は変わったかも分かりませんが、山のシルエット、島影、そして自然は、今も変わらず残っているのです。
小野竹喬作品の収蔵、研究はもちろんの事、加えて竹喬と同時代を生きた作家たちにも目を向けた独創性あふれる企画展の数々。竹喬美術館が果たしている現代日本画の検証も特筆されるものがあります。美術館開館当初に企画された三度にわたる「国画創作協会の歩み展」などは、当時の画壇に一石を投じるようなドキドキする展覧会でした。その後開かれる企画展もひと味違った独特の存在感を示す好企画が多く、地方にあって存在感を示すものとなっているように思います。
取材を終えて岡山市街に帰る道すがら、まさに竹喬が描いた色、形が目の前を通り過ぎて行くのを感じます。どこがどうと特定される訳ではなく、自然の持つ姿がそう感じさせてくれるのです。まさにこの自然にいだかれての何か、存在を感じずにはいられません。※朝刊紙面一ページを全て使った連載です。これまで二ヶ月に一度、隔月掲載を行っていましたが、現在不定期の連載となっています。 吉備悠久Web連載<>相互連携紀田順一郎さんのホームページhttp://plus.harenet.ne.jp/~kida/紀田順一郎さんの「小野竹喬のふるさと」は、以下リンクよりどうぞ。http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2010/062502/index.html
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