落款・パネル張り 完成に向けた作業
4/8//2009 「無い」から始める日本画講座落款・表具・まとめのはなしhttp://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2009/040802/index.html上記を補完する情報です。
完成時にいれる落款、署名となるサインと印について。昔の余白を活かした絵の場合、絵の構図を考える段階から落款の位置を考慮していたことがわかる下図が残されています。現在では描いた後で考えることも多いと思います。なるべく絵の内容のじゃまにならない位置にいれます。注意することは、印が絵の動き、構図を形作る線の延長などと共鳴しない場所を選ぶことです。画面の隅に押す場合も縦横、額縁の枠と同じ距離の場所に押さないといったこともよく言われる注意の一つです。印のみ、サインと印、そして今回加えるのは、学ぶための模写をしたような場合の署名です。※落款の位置まで考えた下図作り 参考 伊藤深水展http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/topcontents/news/2008/120101/index.html
上記解説図、一番右側の例。酒井抱一作、黒犬賛を模写したおりに書いた「平成辛未 (酒井)抱一さんの筆意に倣って(学びました) 知己(自分の名前)」印このような書き込みも古い絵画を注意して見ることで発見することが出来ます。
仮張りに貼った絵は、袋貼りの糊代を除いてなるべく大きく切り取っておきます。水彩額・マットでおさえる場合はフレーミングしてマスキングテープなどで留め、完成です。パネル張りの場合は、入れる額縁の大きさに合わせてフレーミングしたあとパネルサイズに糊代を加えた大きさで切り取ります。
ベニヤパネルに新鳥の子を使って下張りをします。ベニヤ板からシミが出て本紙を汚したり、また有害物質が本紙に影響するのを防ぐためです。
新鳥の子紙をパネルの大きさにのりしろ分(パネルの厚み程度)加え、切り取ります。※新鳥の子 工業的に漉かれた和紙です。一枚あたりの大きさは186cm×98cm程度あり、600円前後で購入できるはずです。絵を描くことも可能です。昔はこれで習作を描くなんてことも多かった紙です。質としては、お札の用紙に近い感じと昔言われました。
切り取った新鳥の子紙の裏全てに糊を付けます。※糊は生麩糊を水で薄めて使っています。パネルの縁だけに糊を付ける袋貼りのほうが本来の目的に沿っているとは思いますが、裏全面に糊を付け密着させることで本紙を貼る時の伸びたり縮んだりでトラブルが出るのを防いでいます。
糊を塗ったあと、ちょうど中央にパネルを置き裏返します。
上に向けたら、シワができないように中央から外に向かって手のひらで撫で伸ばしながら密着させます。四隅は特に注意しながら角を付け折り目を付けます。
立ち上がりの糊代部分は、もう一度糊を加えてでもよく貼り付くように試みてください。角の余りの部分は、折込貼り付けるよりも、画面のように鋏を使って切り取ると作業が早く出来ます。
乾燥すれば、パネルの下張りは完成です。
完成時だけではなくても、絵の制作途中にパネル張りをして次の作業を行いたい場合もあります。仮張りから剥がした絵をパネルばりする工程を紹介します。今回貼るのは本紙ですから、糊は縁のみ、袋貼りにします。
下張したパネルより一回り(糊代分)大きく切った本紙の裏に霧吹きで湿りを与えます。
霧吹きの水滴を水刷毛を使って均等に延ばします。この作業は、乾いた絵塗刷毛でも代用できます。※ほんの僅か湿らせるだけで良いので、多くの水分は必要ありません。
四辺の糊代分のみに糊を付けます。
表に返して当て紙をしながらシワができないように延ばします。
糊代分を裏に曲げ密着させて張り込めば完成です。特に四隅は注意して引っ張ってください。ここが中途半端で遊びがあると乾燥後に斜めの連れが出る原因となるからです。※糊の付き悪い場合があります。張り込むおり、パネルの貼りつける部方にも糊をつけると貼りやすくなります。乾かせば完成です。
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