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1/17//2011  レポート

日本画の研究 アトリエ社出版

■ 「日本画の研究」は、昭和6年9月に東京アトリエ社から出版された本です。日本画の修行というのは、その手法や材料に特殊な、機微な世界を持つモノであり、このあたりをおろそかにしては到底全う出来ないと始まるこの本、一読してその書きぶりのストレートな事に驚きました。また、私自身が知りたかった部分への言及も多く見られます。私の中でいろいろな事がつながって来た今、こうしてこの本を読む機会を得たこと、不思議な縁を感じるばかりです。

備忘録がてら、その内容の概略記録。
 

序文によると掲載されている内容は、当時の「アトリエ」誌上でそのおりおり掲載されたものを、日本画を学ぶ入門書として、もしくは研究書としてまとめたモノだそうです。

執筆陣の豪華な事。
「日本画を志す人へ」というテーマで川端龍子、菊池契月、鏑木清方がそれぞれ書いています。当時の社会状況への認識、明治、大正を経たあとの日本画についてなども触れながら、学ぶ事、絵を描く事について語るその言葉は、あくまで熱く、強い調子を感じさせます。どのように日本画について考えていたのか、問題点などへの言及も興味深い所です。

続く「日本画手法概説」金原省吾 では、東洋画、支那画、日本画といった言葉を対比させながら「線」の意味や、独自の発展を見せる絵巻物、「作り絵」「白絵」「堀塗り絵」という発達段階を具体的技術説明で行っているところも興味深く、また流派の特徴説明に言及しているのも面白い所です。

紹介されている画派 「古春日派」「巨勢派」「宅磨派」「土佐派」「住吉派」

絵巻物の描き方に注目ポイント(5)を設定し、その比較によって支那画(宋画)と大和絵を具体的に対照。<「線」の速度と壓(圧)の関係>

「日本画の見方」鏑木清方
「人物画入門」川崎小虎 模写・臨画への言及あり
「山水画入門」結城素明 芥子園外伝 描法
「花鳥画入門」荒木十畝 四君子 運筆 線
「花鳥画の話」榊原紫峰 花鳥画の歴史
「空白について」川端龍子
「線描の練習」前田青邨

「胡粉と水絵の具の溶き方」「岩絵の具の扱い方」「金泥の溶き方と礬水の引き方」「金砂子の蒔き方」「毛筆に就いて」 
都筑眞琴 大変具体的で細やかな説明、材料への言及も多い
 
「絵絹に就いて」穴山義平
「膠と墨、硯、紙」島田墨仙 狩野派 膠の溶き方
「硯と墨」「水墨」「紙」小杉未醒
「水墨画の話」森田恒友
「岩絵具」山口蓬春 絵の具を焼く事などに言及

諸家の使用せらるる紙・墨・筆(アンケート)
橋本関雪、結城素明、石井林響、岸田劉生、近藤浩一路、森田恒友、堂本印象、川崎小虎、小室翠雲、川端龍子、中村岳陵、村上華岳、菊池契月、水田硯山、速水御舟


北宗画概説 中村不折
日本の南画概説 梅沢和軒
南画の話 小杉未醒
円山四條派の話 藤懸静也 画人系図、歴史等
大和絵概説 穴山義平 名作抄話 特殊技法 表現 足利期以降、現代の大和絵
大和絵略史 山田秋衛 大和絵の意義とその成立 時代区分とともに

浮世絵概説 仲田勝之助 版画と肉筆画 大津絵 絵師 版式
浮世絵版画の話 織田一麿 遊蕩気分の描出 発祥と又兵衛 紅絵 洋画法の応用 明治期の版画

大津絵の話 山村耕花
略画 藤懸静也
簡画 石井林響
現代日本画界の展望と解説 川路柳虹 画壇、画家、流れ
「乳虎園」制作後の竹堂翁 西村五雲
披露のお饅頭 木島桜谷 画塾入門の頃 勉強方法など
芳文先生の偉躯巨聲 宇田萩邨
入門の日の火事騒ぎ 伊藤小波
私塾開業 都路華香 
森寛斎翁 山本春挙
上京後12年 小野竹喬
そのころ 上村松園
節分の入門 田中咄哉
その当時 大河内夜江

※タイトル、著者名をピックアップ。材料技法

 

※参考  アトリエ美術大講座 日本画科 1基礎学
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2010/062201/index.html

※参考 川合玉堂著「日本画實習法」内容一覧
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/k2mokuji.html