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5/6//2018  ○Web吉備悠久

醍醐桜再訪(真庭市)

■ 2006年(平成18年)9月19日(火曜日)山陽新聞掲載の「吉備悠久」は、真庭市の醍醐桜でした。「再訪」としたのには理由があります。山陽新聞社創業120周年記念の紙面を飾るために紀田順一郎さんと共に取材し描いたのが「醍醐桜」だったのです。そしてこの取材は、幸運なことに紀田順一郎さんの文章と私の絵、二人で岡山の地域を巡り紹介する山陽新聞連載「吉備悠久」が始まるきっかけとなりました。また2006年には全国の新聞社が集まる大規模なイベントがこの岡山で行われることもあって書籍化の話にもなり、ならば最初と最後を醍醐桜にと考え、加えてせっかくなら多くの方が目にしたことのない夏の葉桜を取り上げることにしたのです。もちろん開花のシーズンだけではない取材を通じて、夏の葉桜のもつ生命力に惹かれ、一度は絵にと思っていたからにほかなりません。
 
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夏の醍醐桜の素晴らしさに初めて触れたのははたして何時だったでしょう・・・。夏、涼を求めた県北の取材のおり、ふと帰る道すがら何気なく立ち寄ったのが最初だったかもしれません。私にとってそれは新鮮な驚きの光景でした。桜の樹を描くために冬に樹の骨格、枝ぶりを取材することはあっても夏の葉桜をあえてということは少ないものです。ましてやそれが遠い場所にあればなおさらです。
絵ならではとして老樹に実際には見ることが出来ない多くの花を着けさせ咲かせた姿として描くことが出来ます。しかしその時見た姿はそれ以上!生命力に満ち満ちた巨大な緑の塊だったのです。

 
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山陽新聞社創業120周年記念のおりの新聞見開き掲載、当時紙面をまたがった画像の印刷はまだ無く、新しい新聞表現の試みとして行われました。色にもこだわった印刷となりました。画像上部、1999年5月12日(水曜日)の記念紙面です。右下、2006年9月19日(火曜日)の吉備悠久です。新聞紙面を贅沢に使った連載でした。左下は2006年10月に山陽新聞社から出版された「吉備悠久」書籍です。7年間に掲載された記事が一冊になりました。
 

 
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書籍出版後も紙面への掲載は続き(当初隔月であったものが諸事情により最後不定期となりましたが・・・)、都合岡山県内60箇所が紙面を飾りました。取材だけで言えば、それよりずっと多くの地域を二人で廻っています。記事化できなかった地域の皆様ごめんなさい。

※画像は、醍醐桜近くにある古民家の様子。桜花の季節のおりはここが地域のもてなしの場となったり、憩いの場となっていました。

 
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毎回、紀田順一郎さんの文章に加えて日本画の材料を使ったメインの絵一枚に加え、水彩画によるカット二枚、カットの描き込みは概ねスケッチ程度でした。


※画像は真庭市岩井畝の大桜 人物を配して桜の大きさを暗示しました。こちらももちろん葉桜。

 
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 醍醐桜(山陽新聞社創業120周年記念 1999年)

現在、上記の絵は岡山県立美術館地下1階に展示されています。
光栄なことに岡山県立美術館開館30周年記念展「県美コネクション」に飾っていただいているのです。また地下入って正面には私が企画・制作に関わらせていただいた日本画アートボックス(日本画に用いる材料、技法、作画プロセスを紹介する教育ツール)も展示していただいています。

高校卒業以来、再び岡山で暮らすようになって22年目。人との繋がりも増えました。故郷に助けられ育てていただいていると思うことの多い今日このごろです。

今もふとした会話の中でこの連載の話が出ます。新たな岡山での生活、地域との関係を始めるおり、紀田順一郎さんと取材に歩き、そして地元新聞社の連載として記事としていただいたこと、本当にありがたい機会、得難い機会をいただいたと思うところです。

紀田順一郎さんから今回の「醍醐桜再訪」をもって、web版吉備悠久を休載したいとのお話をいただきました。紀田順一郎さんのご事情、お考えあってのことです。残念ではありますが、これもしょうが無いことと致します。

紀田順一郎さんの記事 下部
醍醐桜再訪(真庭市)2018年04月15日《お知らせ》に書かれておられる内容を補完する形で今回の記事をまとめました。
記事には、「私が醍醐桜を初めて見たのは、1999年4月12日でした。もう20年以上昔のことになりました」とあります。また「ちょうどそのころ、私は還暦に達し、岡山に第二の故郷を定めることで、仕事に弾みをつけようと、意欲を燃やしている頃おいでした。」とあります。私自身、今年還暦となりました。出会ったおりの紀田順一郎さんの年令になった自分が今ここにいることに驚くばかり、当時と何も変わらない自分のようでいて、それでいて戻ることの出来ない時間が否応なく過ぎたことを改めて思い出しています。

紀田順一郎さんからはかけがえのない素晴らしい時間をいただきました。本当に感謝するばかりです。心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

以下は紀田順一郎さんの記事へのリンクです。
紀田順一郎 吉備悠久  醍醐桜再訪(真庭市)2018年04月15日 
http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2018/041501/index.html

紀田順一郎さんホームページ 書斎の四季
http://plus.harenet.ne.jp/~kida/index.html

本当に有難うございました。