Drake SPR-4
元々、アメリカン・ノビス向け Drake 2-NT に、マッチする受信機を探していました(CW運用する気は、ないのですが!?)
ほぼ同世代のDrake 2-Bは、手元にあるのですが、デザイン的にはちょっとミス・マッチです
2-C(シリーズ純正)、R-4A あたりが該当する時代の、デザイン的にマッチする受信機です
真空管100%から半導体を含むハイブリッド構成・・・半導体の利用が進みつつある時代の製品です
ところが、なぜか、いずれも中古市場で、意外と高い!!
そこで、当時とすれば不釣り合いなSPR-4に目をつけ、こちらを入手することにしました
何が不釣り合い? 2-NT $149 に対し、SPR-4 $609 これが、新品時の価格です
きっと、当時ノビス・ライセンスの方には、手が出せなかったでしょう(当時国内では、世和興業が販売代理店をしていて¥30万近い標準価格が付いていました/$1=¥360 の時代)

このゼネラル・カバレッジ・レシーバ SPR-4 ですが、業務用モデル RR-1 と、同じものなのです
Drake RR-1


こちらは業務用/ラック・マウント型

RR-1内部を撮したもの
内部写真 左2/3に注目!、ズバリ、SPR-4です
スピーカーを前面パネルにもっていって、DC24Vに対応する電源を内蔵し、ラック・マウント用のケースに収めたもの
下の写真と、見比べてみて下さい
細かくは、AGCのON/OFF、アンテナ・アッテネータなど、機能の追加があるようです 


1969年の発売から1978年頃まで販売されたようで、デザインは、Cラインを踏襲していますね
273W × 140H × 324D と、このコンパクトさも、きっとウリでしょう
リアパネルです
再びケースの中に戻してあるケーブルは、内蔵スピーカーへの配線です
周波数シンセサイザ FS-4を入手しました(2023.05)
R-4用で、そのままでは周波数にずれが生じますので、クリスタルを特注する段取りです
今回入手したものですが、23バンドクリスタル実装が可能なところ、21バンドが装備してありました
標準モデル(8クリスタル)に、アマチュア無線バンド・オプション(6クリスタル)と、海外の航空無線(HF帯)受信用オプション(7クリスタル)を追加したもののようです
WARCバンドを除く、1.8〜29.0MHz帯のアマチュアバンドを含むことになります
WARCバンドを除く、3.5〜28MHz帯をカバーする 2-NT には、十分すぎます!

本機のスペックというか特徴/ウリは、
  1.150〜500KHz + 0.5MHz〜30MHzの範囲を500KHz単位で23バンド・カバー
  2.先進のFETを多用した、オール・ソリッドステート構成
  3.周波数読み取り精度 1kHz(直読)
  4.受信モードに合わせ、適切な帯域幅を選択
     CW:0.4KHz@-6db、2.7KHz@-60db
     SSB:2.4KHz@-6db、7.2KHz@-60db
     AM:4.8KHz@-6db、10KHz@-60db
  5.いずれの目的にも対応できる高感度(下段に記載の表現が、正しい表記)
     SSB/CW:0.25μV S/N10db
     AM:0.5μV 30%変調 S/N10db
  6.ノッチ・フィルタを内蔵
  7.スピーカーを内蔵
  8.AC120/240V DC12V(ケーブル・オプション) に対応
 と、このようになっています

1stIF:5645KHz 2ndIF:50KHz という、DRAKEお得意のプリ・ミックス方式のダブル・コンバージョン・タイプのものです
4ポールの5645KHz ラティス型フィルターに、50KHz LCフィルタの組み合わせと言うことになります
改めてスペックを見るに、AM重視で設計された受信機と言えそうです

さて、今回の取り組み・・・いつものことですが、中古を入手してそのままで使えるとは思っていません
オプションがどうなっているかも、実際に目にするまで詳しくは分かりません(全く分からないケースも)
今回も、一見程度の良く無さそうな「モノ」を入手しました
簡単な通電テストで、決定的なトラブルが無く、おおよそ動作をしていることを確認後、大掃除・ハードのメンテからスタートです
ここからが趣味です、きっと!
4ラインとは異なり、シャーシ/ケース全てアルミが採用されています
ケースには隙間もほとんど無いため、ホコリなども入らず、アルミ・シャーシの採用で錆びることもなく、内部は非常に綺麗な状態でした
ご覧のように、最初からスピーカーを内蔵しています
上蓋(ケース)の真ん中に、なにやら穴らしきものが見えます(後述します)
さて、上記 RR-1 の内部写真と、比べてみて下さい
全く同じであることが分かります
ケースは、なぜかベタ付いていて、汚れが付着しています
簡単には拭き取れません
アルコールを使った洗浄から作業を開始
ツマミの溝には、ホコリ?たばこのヤニ?が、こびり付いていました
歯ブラシを使ったくらいでは、歯が立ちません
カッター・ナイフの刃を使って、お掃除しました
非常に綺麗になりました

フロントパネルとシャーシ間に貼られている
スポンジは、ボロボロでしたので剥がしとって
新たに堅めのクッション材を用意しました
写真は、剥がしてクリーニングしたところ
散らかった作業テーブルの上でですが、本格的な分解清掃です(いつものことですが、本業途中の気分転換、思いつきで作業スタートです)
アルコールが活躍します
スポンジ類の劣化が著しい・・・ゴム類も、です
代替できるところは、手持ちのパーツを活用します
今回で言えば、メイン・ダイヤルの周波数校正時に袴を押さえて目盛板を固定してダイヤルを回して周波数を合わせるのですが、このための押さえであるブッシングの代替調達に苦労しました
当時のR-4(A、B、C)シリーズと比べ、半導体化が進んでいます(本機は100%半導体です!)
アルミ・シャーシ、ガラス・エポキシ基板、使用パーツ等は、耐久性の観点からして、4ラインより、ひとランク上そうです
整然と、基板類が配置されてます
VFO(Drakeでは、PTOと呼んでいる)の安定度は、なかなかの優れもの、試しにBC帯のAM放送をSSBモードで受信して、ドリフトはほとんど気になりません
帯域幅500KHzのリニアリティも、なかなかです
マーカーが、不要かとも思ったくらい・・・
FETを発振に使った、R-4Cと同じタイプのVFOのようで(周波数ダイヤルもそうですね)、パス・バンド・チューニングが無いくらいで、ハイブリッド構成のR-4Bをオール・ソリッドステート化したような設計に見えます
本機ですが、バンド・クリスタルの追加装着以外に、オプションの装着はありません
ノイズ・ブランカ、マーカーが、一般的なオプション
電源トランス右に、ジャンパー同軸が見えているところが、ノイズ・ブランカ装着部です
右下角地のソケットが、マーカー・オプション装着部です
ほかに、テレタイプ・アダプタ、T-4・T-4X送信機接続(トランシーブ)アダプタ、DCコードがオプションとしてあったようです(NB以外、必要があれば自作できそうです)

シャーシ上は、非常にスッキリしています
(基板類は、何も見えません・・・)
こちらは、シャーシを上から撮したもの
ほぼ中央に見える真四角な物体が、4ポールの5645KHz ラティス型フィルターです
その右横に見えているφ6通信用ジャックは、ループ・アンテナ(150KHz〜1600KHz用)の接続用端子です
ケース上面のど真ん中(このジャックの真上!)にキャップで塞いだ穴が開けてあります
キャップを外し、ここに直接AL-4というオプションのループ・アンテナの軸を通し、このφ6のジャックに直接差し込んで接続することで、使用する構造です
AL-4 接続の様子

簡単な方向探知機能を持たせた受信機に、良くあるパターンです
そう、回すのも簡単!
RF同調機構は、これまたDrakeお得意のスラグ・チューンです

やはり、マーカーは、欲しい!・・かな?

【その後】運良く、純正マーカーSCC-4の入手が出来たので、ここは純正と入れ替えました
先の配慮が活きました(2017.07)
ジャンク箱を探したら、1MHzクリスタルから分周して20KHzを出力するマーカー基板が出てきたので、このものを本体に加工を加えることなく、組み込むことにしました
シールド板を止めている鉄板ビスに、金属スペーサーをねじ込み、そこに基板を取り付けました(1本止め)
内蔵スピーカーに当たらない場所に・・・です
配線は、純正オプションを取り付けるソケットのピン受け穴を通して、シャーシ下で半田付けしました
もし純正が手に入っても、そのまま入替えが出来きるよう改造はせず、純正同様に制御端子をアースに落とすことで稼働/通電するように、マーカー基板内電源供給ルートにPNP-Trで簡単なスイッチ?を追加しました
縁あって、純正のマーカーユニット(SSC-4)と、ノイズブランカ(5-NB)が手に入りました
実装しました(2018.02)
左写真の通りです
長期間保管されていたモノのようですから、ゴムの劣化、SWの接触不良などはあって当たり前ですが、電気的には大きな問題はありませんでした(湿気のない状態での、良好な保管に見受けられます)
アルミ・ケースの採用が納得できる、裸で使うと何となく不安定な動作・・・発振気味というか、回り込み気味というか・・・そんな状況も散見されました
受信感度をチェック
ハイ・バンドはスペック以上の動作の確認が出来ましたが、周波数が下がると共に感度が低下します
RANGE A及びBでは、その低下度合いが顕著になります
これは、何か問題があるぞ・・・
RANGE A及びBにおいては、アンテナ・コイル/コンデンサの値を変えても感度に変化がありません
RANGE A及びBのアンテナ回路には、途中にループ・アンテナの接続回路が入っています
犯人を発見!! この接続回路にあるTrがショートしていました
手持ちの中から、似たようなRF用小信号Trに交換
こちらが、今回唯一の電気的修理でした
多分、この状態がほぼ正常かな?と思われるところまでやって来ることが出来ました

さて、本機のスペックですが、一行で書かれています(バンド範囲等の記述はない)
 ・SSB/CW 0.25μV for 10db S+N/N  
 ・AM       0.5μV with 30% modulation for 10db S+N/N
こちらが、マニュアルに記載されたスペック表記です
中波、長波まで本当に均一なのかなぁ・・・
ここまでに得られた、受信感度の数値です

 230KHz: SSB/CW  0.5μV S/N  9db AM    2μV S/N  8db ※16db
 520KHz: S/N  9db (変調のON/OFF) S/N  8db ※19db

 1.8MHz: SSB/CW  0.25μV S/N 10db AM  0.5μV S/N  4db ※13db
 3.6MHz: S/N 14db (変調のON/OFF) S/N 10db ※14db
 7.2MHz: S/N 15db S/N 10db ※13db
21.3MHz: S/N 16db S/N 10db ※16db
28.3MHz: S/N 16db S/N 11db ※18db
              ※SSB/CW同様に、30%変調をかけた信号自体のON/OFFによる

 比較参考 JRC NRD-535

実際に、中波から短波帯のAM放送を受信してみて
・評判どおり、良い音で受信できます(やや、ローカット気味))
・短波帯では避けて通れないフェージングの影響も、最小限に押さえられています(非常に聞きやすい)
これらの点は、特記できると思われます
もちろんSSBについても、例えば7MHz帯で問題なく、なかなか良い音で受信できますし、CWの受信も問題ありません
2-Bのどこか濁った感じのするビート音とは比較にならない、綺麗なトーンが得られます
2-CR-4Aを探して入手するより、面白い取り組みも出来たし、良い結果が得られたように思っています
が、結果、いずれも入手してしまいました
余談
1977年のDRAKEカタログでは、SPR-4 $629 の記載です
当時のレートは $1=¥240 でした
2018.02  JA4FUQ

無線機歴史博物館に 戻る


週間クールサイトに選ばれました
無線LAN専門サイト
青電舎:担当 堀
   Mailは seiden_atmark_po.harenet.ne.jp
              (お手数ですが、_atmark_を @ に直して下さい)
      お電話では、(086)275−5000 
      FAXは、0120−545000
      〒703−8207 岡山県岡山市中区祇園433−6