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3/10//2014  材料技法

岡山の膠作りワークショップ・2014 その1

■ 今年の膠作りワークショップ開催が間近に迫りました。関連情報他

岡山の膠作りワークショップ2014
期日  2014年3月16日(日曜日)  ※今回は1日のみ開催です。
時間  午前10時30分〜午後4時頃まで
場所  岡山県加賀郡吉備中央町竹部

燃料代他として参加費 500円(学生無料です^^)
<昼食としてこころばかりですが、おにぎり、猪鍋、お茶などを用意しています>

地図、場所などの詳細については以下リンクをご覧ください
岡山の膠作りワークショップ・2014(告知)
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2014/021001/index.html
 
※駐車場 バス他公共交通機関の利用が限られますので、アクセスは自家用車となると思われます。「きびプラザ」向い、交番と消防署の間(吉備新線、きびプラザ前)空き地を臨時の駐車場としてお借りしています。
 
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ニュース! 今年はヌートリアを主要な素材として実験を行う予定でしたが、昨日、左画像、「鹿皮」を入手することが出来ました。

備前市伊部あたりで捕獲された鹿だそうです。

もともとこの試み、現在、猪、鹿、ヌートリアなど、害獣として駆除される存在を資源化出来ないかと考えたことが始まりであり、また私の関わる日本画の材料、「和膠」という存在を、実際に作って日本人の価値観を探す試みとしてスタートしています。鹿ももちろん素材として重要なのです(ただし、鹿はすでに過去、利用されています)
近年、ここ吉備中央町でもイノシシに加え、鹿も散見されるようになってきたそうです。捕獲数も増えてきているのだとか・・・・。

今回、「鹿膠」という言葉が示す意味。何故、原料として鹿が使われてきたのか?を確認する良い機会をいただいたと思っています。
※提供いただき、感謝です!!

 
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膠を作る原料として生皮を処理する

1:膠(ニカワ)を作るのに何を原料とするか?
 また、原料としての皮は、生皮をどのように処理すれば好ましいのか?

左画像は、上記鹿皮を持ち帰ってすぐ、皮に付着した肉の層を剥がしているところです。昨年の猪(イノシシ)皮の時には、参加者の人海戦術、大勢で皮裏のタンパク質(肉)、脂肪、を削り取りました。また毛も処理しましたね。参加された方は覚えておいでと思われますが、この作業が大変だったのです。毛の部分にゴミ、土、ダニなどがたくさん付いており、また、脂肪や肉は、ニカワの原料として適さない、もちろん毛も極力無い方が結果が良いことをその後の実験で確認しました。

画像は、鹿皮の場合、肉の層が引っ張るだけで綺麗に剥がれる様子です。この部分だけをみても原材料として好ましい、処理しやすい素材であることが確認できます。
なんと鹿ではこの層を剥がすと、白く見えている部分こそが原料となるすでに皮なのです(ヌートリアも同じ!)。

イノシシで処理するのが大変だったこの肉と皮の間の脂肪層が無いのです。

 
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左画像は昨年のイノシシ皮の様子です。(イノシシの皮で原料となるのは、画像中、グレーに見えている部分です。)

明らかにピンク色の部分(肉)、白い部分(ピンクとグレーに挟まれた部分、画像左下辺り)が多く、密着していることがわかると思います。

 
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次に、重要な毛の処理について。

左画像は今年試みるヌートリアの皮を「※水漬け法」によって毛を処理している様子です。一定期間(実験では約3週間、漬け込みました)、皮を水に漬ける(腐らないように流水を用いるなど注意する)ことにより、バクテリアなどの働きにより毛が容易に抜けるようになるのです。※川ずけと呼ばれるなど、皮なめしの手法にあります。

簡単に手で引っ張ると、毛が抜け白い皮が現れました。
※昨年のワークショップのおり、「水漬け法」がうまく行かなかったイノシシ皮でも、その後の実験によりより長期間水につければ可能であることが確認されています。
 

 
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左画像は、処理の終わったヌートリアの皮です。肉、脂肪は剥ぎ取ることによって処理し、また毛は「水漬け法」によって処理しました。

※皮を革に加工する「なめす」という作業では、大規模な事業として行う場合、薬剤処理で毛を溶かしたり、裏の脂肪層、タンパク質を溶かしたりするのだそうです。

市場に流通するニカワが原材料としてこの革製造。使用の過程で出る端切れなどを用いることの問題、この残留する薬剤の問題を指摘される方もいらっしゃるようです。

 
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上記処理の終わったヌートリア皮を板に張り付けて乾燥させている様子です。

なるべく平面として伸ばしているのは、保存時のコンパクトさ、平面性確保のためでもあります。

鹿ニカワの原料皮の様子と近いように思われますがいかがでしょう?

このような状態とすることで、原料とする皮を準備し年間を通して蓄えることが可能となり、そして気温の下がる冬に膠作りの作業を集中して行う事ができるのです。

 
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乾燥が終了し、膠原料となったヌートリア皮。

次は、この原料皮をハサミで適当な大きさに切り刻み、水を加え煮る作業となります。
※当初、今回のワークショップでは、ヌートリアの皮処理体験(毛の処理、肉脂肪y層除去)を行う予定でしたが、この乾燥皮をハサミで切り、煮る直前までの作業とします。代わりに鹿皮による処理体験を行うことにします。

 
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水を加え、煮ます。
画像は、昨年のイノシシのおりのものです。

加える水の量についてですが、要は原料皮に含まれるゼラチン質、コラーゲンを煮だし、煮詰める作業ですので、少なく入れれば、途中で焦げ付く恐れもありますし、また多すぎれば、煮詰めるのに時間がかかることになるわけです。

!重要なのは100℃を越えないこと、和膠抽出の勘所としてはこの温度管理が大切だということです。単に接着力の強さのみを求めるのではなく、乾燥後もあるいっていの保水性を担保するコラーゲン成分を壊さないということが重要なのだそうです。

 
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ある程度煮だした段階で、原料皮を取り出します。

この原料皮を再利用して、二煎目、三煎目を抽出することが出来ます。

※温度管理について
当初70℃程度での煮出しにこだわりましたが、墨運堂会長他のアドバイスもあって、95℃程度まで温度を上げてよいと思うようになりました。煮出す温度を上げることにより、抽出される膠の性質が変わります。

溶液の温度を測る場所も重要です。

 
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湯煎により煮詰めている段階です。
もちろん、この溶液は、すでに膠として機能します。

これはすでに「膠液」なのです。
同時に、どの程度の濃度にして使うかをこの段階で決めることも出来ます。
※膠液としての濃度をどのように考えるかも、技法上重要なことです。

現在行っている過程は、乾燥させることにより長期保存できる膠を作成するためのプロセスなのです。

 
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乾燥膠として固形化するのに適当な煮詰まり方の段階、その目星となるのは、煮詰めた膠液表面に膜が張り始めること。

画像は表面にはった膜を割り箸で確認したところです。かなりの粘着力です。

チェンバロ制作の難波さんが昨年のワークショップで見せてくれた西洋楽器用の膠、原材料としていろいろな部位を用い、同時に抽出温度を高くしたものではないか?、実験を重ねる中で、そのように思っています。

 
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バットに移し、冷まします。

綿布、ガーゼ等で濾して不純物を取り除きます。

 
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ゼリー状になったら切り分け、冷暗所におき、出来たら風をあてて乾燥させます。

もちろん腐らさないように注意することは言うまでもありません。同時に注意することは、零下にしないこと。

※零下にしてしまうと細かい亀裂がたくさん入り、質の異なったものとなります。

 

※2013年猪膠制作実験のその後について
(乾燥工程、完成した膠の紹介)
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2013/041201/index.html

※膠作り実験・まとめ(3月+追記)
(2013年に行った膠ワークショップまとめ記事)
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2013/020801/index.html

※膠作り実験・補足(3月+追記)
(膠の乾燥詳細と、より簡単な手法の開発実験)
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2013/021301/index.html

※墨運堂さんより猪の膠で作った墨が届きました!
(2013年猪膠制作実験のその後について で、作った膠から墨)
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2013/122102/index.html


※岡山の膠(使用実験その1)
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2013/012401/index.html
 

 

膠の製作実験、また使用実験

和膠とはどんなことを目指して作られてきたのか?
何故、膠原料として鹿が用いられたのか?

そんなことを墨運堂さんに作っていただいた墨を試墨したり、実際に原料皮に触ってみたりして確かめる機会になればと思います。2014年のワークショップさて、どんな発見がありますことやら。

 
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参考画像

左画像は2013年のワークショップでの一場面
イノシシの皮を切り分け、毛の処理、脂肪、肉の処理を大勢で行いました。

 

※注意!動物を捕獲する、また皮を処理したり、加工すること、それぞれに関連する法律が存在します。今回の試みも、免許をもった猟師さんから捕獲された動物の皮をいただき、あくまで実験・研究として作業を行っています。実施においては、近隣に迷惑をかけないような配慮も重要な事です。注意してください。^^(3月22日追記)