TRIO KENWOOD R-820
バブリーな時代というか、日本が元気のあった時代の製品です
DXハンティングにあっては、送受信機の組み合わせ(一般的なセパレート構成)や、トランシーバー+外部VFOの構成より、トランシーバー+受信機の組み合わせがベストマッチ、など言われた時代の受信機です
先行して、トランシーバとしてTS-820という製品が発売になっていました
コリンズ風のメインダイヤル読み取り機構・・・2枚の円盤を使って3桁のKHz表示をするものですが、アナログ的な読み取りに優れた方式が作用されていました(本機もですが、後継機TS-830でも採用)
同シリーズの受信機・・・TS-820から送信部を取り去ったもの?と思われがちですが、実はそうではありません
TS-820がシングルコンバージョン構成に対し、R-820は、トリプルコンバージョン構成です
トランシーバーとは全く異なる設計・・・DRAKEを意識したと思われる設計が見受けられる受信機です
PLL方式の採用という点でも、101シリーズでイケイケだった八重洲よりこの820シリーズが先行しています
余談ですが、PLL技術を最初にアマチュア無線界に持ち込んだのは、多分ですがユニデン2020です
R-820 1978年の発売で、当時¥210,000という大変高額な受信機でした
TS-820というトランシーバーがすでに発売〈1976年)されていて、高級機の位置づけで人気を博していました(S:当時¥230,000)
この点から見てもR-820は、いかに高額であったかが分かります
1st-IF 8.83MHz 2nd-IF 455KHz
ここでVBT(2つのフィルタを重ね合わせて帯域幅を可変する仕組み)が機能します
そして、3rd-IFは、50KHzです(DRAKE R-4 や、Pana RJX-1101と同じ)
ノッチフィルタは、ここで用意されます
改めてですが、TS-820は、IF 8.83MHzのシングルコンバージョンです
フィルターオプションは、8.83MHzのAM用6KHz巾、CW用0.5KHz巾
455KHzのCW用0.5KHz巾と0.25KHz巾の
いずれもクリスタルフィルタです
言い方を変えると、8.83MHzのSSB用(2.7KHz巾クリスタルフィルタ)と、455KHzのAM用(6KHz巾セラミックフィルタ)、SSB用(2.7KHz巾セラミックフィルタ)が標準で実装です

比較の相手としては、八重洲 FR-101があります
こちらは、従来モデルであるコリンズタイプのダブルスーパー方式の採用で、PLLを採用した本シリーズのほうが周波数安定度においては一歩優れていると思います
また今でいうルーフィングフィルタの採用、ミキサはバランス型の採用など、全体的に見ても本機のほうが優れていたと思われます

本機はCOMMUNICATION RECEIVERと名乗って、短波放送帯4バンドをカバーしていますが、ゼネカバではありません
あくまでHF帯専用であり、FR-101のような50/144MHzに対応したコンバータの内臓はできませんし、FMモードへの対応もありません

本機ですが、当時 JRC NRD-505は別格かもしれませんが、その次のポジションにつけることのできる受信機であったように思います

トランシーバーにVBT機能が組み込まれたのは、1980年発売のTS-830(S:¥180,000)が最初だったと思います
COMMUNICATION RECEIVER/ゼネカバ受信
ゼネカバ受信を早い段階から実用したのは、アマチュア無線界ではDRAKEです(TR-7
国内では、アイコムが先行しました(IC-720
いずれもアップコンバージョンタイプのものです
本機は、下記の短波放送帯4バンドをカバーしています
49mバンド  5.9〜6.4MHz
31mバンド  9.4〜9.9MHz 
25mバンド  11.5〜12.0MHz
16mバンド  17.7〜18.2MHz
操作を見てもわかるように、29.5MHzにアップコンバージョンする方式です(これらの受信に関してはクワドラプルコンバージョン動作になります)
リアパネルの様子

TS-820との接続
Fullトランシーブ出来るよう、またVFOのたすき掛けの運用ができるよう設計されています
ヒロセの角形コネクタがついているケーブルは、そのために必要なケーブルです

DCケーブルを用意すれば、DC13.8Vでの動作も可能です
上蓋を外した様子
上蓋を外した様子

角度を変えて

一番手前は、RFユニット

上蓋を外した様子

角度を変えて

一番手前は、IFユニット
その奥は、ディジタル表示用カウンターユニット
ここの中に表示トラブルの原因が・・・
IF部
オプションのCWフィルタ YG-455Cが追加されています(一番大きなフィルタ)
その上は455KHzのSSB用/AM用のセラミックフィルタ
下蓋を外した様子

上が、フロントパネル側
下蓋を外した様子

角度を変えて

上がリアパネル側
この頃のTRIO KENWOOD製品によくあるトラブルです
VFO VCのステーターの接触不良により発生する、VFOの発振停止
以下の作業については、それなりの慣れというか慎重さが必要でしょう
まずはVFOユニットの取り出し(取り外し)から
意外とPLの扱が難しい・・・赤いケーブルが見えます

蛍光表示管 壊したら最後、補填が効きません
取り外したVFOユニットを解体
VC軸のアース間のベロ部の接触不良
VCローター  右奥の弓なりになっている金具がそのベロです
VCローター軸のベロ部分を清掃
テンションをかけるためにワッシャを追加
効果があるかどうか?ですが、手元にあったアンテナ用の導電性グリス(TENA-MATE)を塗布
関係して周波数(展開)調整を行いました
今回は、ダイヤルのリニアリティについては触りませんでした(±500Hz内に収まっている)
ディジタル表示に異常
21MHz・14MHzバンド 100KHz台の表示が、2と1が、5と1が同時に点灯して見える
あと、バンド21MHzが22MHzと同時点灯に見える
試しに一晩放置しておいたら、あれれ、いずれの症状も無くなった!?
しばらく通電していないといろんなことが生じるという、ひとつの例です
上記の症状は温まると出た症状なので、ここはポイントクーラーが活躍
症状のあった時の対応で原因を特定しました
シールドケースを外しているカウンターユニットの中に犯人がいました
が、何もせず一晩放置した最後には正常に!?
それでもコールドスタートさせれば異常が生じますので、特定したPartsを交換しました
【仕様】の確認
トラッキング調整ほか、何も手を付けていない状態での計測です
受信感度   SSB/CW  0.25μVの信号ON/OFFで、S/N10db
       AM    1.5μVの信号に30%変調をかけ、変調のON/OFFで、S/N10db
と、仕様通りの感度が得られていることの確認が出来ました(各アマチュアバンド)
受信という基本的な動作については、発売から40年以上経った今でも、発売時の性能をキープしていたことになります
これはこれで凄い! 
2023.05  JA4FUQ

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