国宝 尾形光琳作 紅白梅図屏風の描法再現 記録

 2011年5月、私は、かねてより日本画研究会でご一緒していた 吉備国際大学・文化財保存修復学科の馬場教授、棚橋助教(当時)さんの硫黄粉を使った銀箔硫化の研究に刺激を受けて、尾形光琳が描いた国宝、尾形 光琳作 紅白梅図屏風の流水描法を実際に描いて実験してみようという試みを始めました。その試みの成果は、8月の末〜9月の頭にかけて行ったアートガーデンでの個展で 何点かの銀箔硫化による流水表現を用いた作品を発表することにつながりました。同じ頃、紅白梅図の所蔵先である熱海MOA美術館に加えNHKは、第二次調査結果を補完する紅白梅図の追加調査研究を東京理科大学の中井泉教授に依頼して進めており、流水部から硫化銀を検出、また残留する硫黄も検出したのです。これを 受けてNHKは、この調査結果をわかりやすく伝える番組制作を企画、番組内で紅白梅図の原寸サイズでの再現を行う画家としてこの試みを個展発表していた私が依頼を受けたのです。
 
 2011年12月19日放送 NHK BSプレミアム「極上美の饗宴」「シリーズ 琳派・華麗なる革命 黒い水流の謎〜尾形光琳“紅白梅図屏風

 番組内での制作は紅梅のみだったのですが、せっかくいただいたこの機会、手が変わらないうちに白梅もと思い、個人的に白梅を制作して一双とすることにしました。制作は暮れから年明け15日あたりまでの制作期間で行っています。

 ※尾形光琳 国宝「紅白梅図」描法再現の記録 (白梅の製作過程)

 BSでの再放送が何度も行われ、地上波でのダイジェスト紹介もありました。反響もあったということで新たな編集とともに、光琳研究で著名な河野元昭先生とご一緒させていただいて、2012年2月の日曜美術館での放送となりました。
 
 作品はありがたいことにMOA美術館     開館30周年記念 国宝 紅白梅図屏風 所蔵名品展 で 本物と一緒に飾っていただく光栄にあずかりました。また、平成23年度 文化庁ミュージアム活性化支援事業特別公開・東日本大震災復興支援「国宝 紅白梅 図屏風とMOA美術館の名品」での仙台市博物館での展示に帯同となり、大変多くの方々に見ていただくことが出来ました。
 
 その後、放送時、展示時ともにパネル制作であったものを、返却後、かつての画家方々に倣い、「倣光琳筆意」として制作年と共に署名を書き込み、表具、屏風に仕立て上げ(2013年9月)て現在に至ります(最下部の画像参照ください)。

 お世話になりました皆様に感謝しています。

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